2009/05/31

P2Pファイルシェアリングの合法化のための模索

P2Pでコンテンツを無料でシェアする行為を合法化できるような仕組み作りが提案されている。その仕組みとは、ユーザーが契約するISPの月額料金にP2P利用料を含めるというもの。

ハーバード大学発の会社、Noank Mediaの最高技術責任者のDevon Copleyは、そうしたP2P合法化の仕組みは避けられないと考える。Noank MediaはすでにP2Pで個別のユーザーがどのファイルをどの程度視聴したかトラッキングできる技術を披露している。それが音楽ファイルだけでなく、映画などの映像ファイルにも効果を発揮するため、音楽業界と違ってP2P合法化の仕組みに否定的な映画産業も、いずれは納得せざるを得ないと自信を見せる。

Noank Mediaは、昨日紹介したP2Pダウンローダーの弁護に当たるネッソンの同僚のテリー・フィッシャーが2004年に設立した会社で、トロントに拠点を置いて、コンテンツ業界のコンテンツのライセンス契約を取ってISPなどのサービスプロバイダーに月額課金制度を提案している。昨年、香港のISP、Cyberportと共同でトラッキング技術をテストした。

P2P利用者がどのファイルを見たか、何回見たか、どんな見方をしたか、全てをトラッキングしてデータとしてユーザーのPCに保存し、定期的にISPにアップロードするが、現状ユーザーはアップロードを拒否できる。データ保存が任意になれば当然数値は正確ではなくなる。よってユーザーの協力が欠かせない。

ハリウッドはこの仕組みの展望を楽観視していないが、Copleyは音楽業界ほどの被害を受けていないハリウッドも、今後被害が甚大になるにつれてこの仕組みを検討せざるを得なくなるだろうと言う。ダウンロードに時間のかかる映画ファイルも、技術の進歩によりその時間は短縮され、被害は確実に拡大する。音楽業界がこの仕組みで収益を回復させるなら、他のコンテンツ業界も飛びつくだろうと言う。



2009/05/30

ネッソンの違法ダウンローダー弁護と新法解釈キャンペーン

以前軽く触れたが、アメリカのフェアユース規定の法解釈を巡って、ハーバード大学ロースクールの教授が世界中の違法ダウンローダーが賞賛しそうなキャンペーンを大々的に行っている。

チャールズ・ネッソンといって、P2PシステムのKazaaを使って著作権保護された音楽レーベルの曲をファイルシェアしたとして全米レコード協会から提訴されてるボストン大学の大学院生、ジョエル・テネンバムの弁護に、彼の生徒とともにあたっている。

そのネッソンがArs Technicaに記事を寄稿して、彼の主張をぶちまけている。

曰く「25歳のテネンバムはたかだか7曲をアップロードしただけで9時間も拘束聴取され、彼の家族も取調べを受け、PCも全米レコード協会の“専門家”に提出させられ、おまけに105万ドルの損害賠償を求められている。

これは全米レコード協会による法律の乱用で、比較するならばスピード違反で捕まったドライバーが違反を認識していたならば、オーバーしたスピードの単位ごとに15万ドルの罰金を課されているようなもの。付け加えるなら、罰則は一般に認知されていない法律で、捕まえるのが警察ではなく私的取締り機関で、政治的責任を問われないから誰を標的にしようとも問題視されない。3,000〜7,000ドル払えば起訴を免れると持ちかけられ、払えば全額懐に収めてしまう。

テネンバムはネットに育てられた世代の代表で、彼のP2P利用はネットの延長線上にあり社会通念上習慣化している。このことを理解しなければ教育や法律という規制のフレームワークを更に社会全体の利益を生むように改革していくことはできない。

テネンバムのような全米レコード協会に提訴された35000人の個人は、訴訟を賄う費用を捻出することは簡単ではない。そこがアメリカ司法の根本的な欠陥で、原告と被告を経済的なバックグラウンドを無視して同等だと見なす。当然弁護士費用を作れない個人は原告である協会の和解案に交渉なく同意するしかない。

法律を変えたいなら何故個別の訴訟に汲みして議会に行かない?と多くは批判するが、協会もその道を選ばず、個別の個人を対象にした訴訟で金銭的な損失を埋めようとしている。弁護士や法学部教授のような専門家は私のフェアユースの法解釈に対して批判的だが、テネンバムが協会の和解案を蹴ったように、私も法曹界に疑問を呈し、挑戦する。」

弁護士で元ジャーナリストのベン・シェフナーはブログで大いに反論している。

「まず、テネンバムがアップロードしたのは7曲ではなく、800曲以上で、数百万人の他のユーザーが無料でシェアできる状態を作り出したこと。そして、協会は個別の曲に対してリミット一杯の15万ドルを請求しておらず、法定賠償金額の最低額以下の金額で和解しようとしていること。テネンバムに対しても4500ドルを提示して蹴られ、4000ドルを再提示した。また、9時間の拘束聴取は、どこの法律事務所でも日常的に行われている光景で、テネンバムなどは質問をはぐらかして聴取をむしろ楽しんでいたふしがある。彼のPCが提出させられた件でも、本件に関係ないファイルにアクセスしないようにプライバシー保護のルールを遵守したかたちで行われた。テネンバムの弁護に立つネッソンの役割は、訴訟を被告のダメージの最小化で素早く終わらせることで、被告を世界的に有名な殉教者に仕立て上げることではない。」


新ニューエコノミー

1980年代、Massachusetts Institute of Technologyのトム・マローンは当時登場し始めたインターネットが産業構造に与える影響を予測した。インターネットは、既存産業を分割し外部化するとした。

トップダウン型のビジネス共同体は供給網との決済コストを最小化するために作られたが、ウェブは国際化の究極形で、もはやひとつのグループ内でビジネスが完結することはむしろ少ない。ひとつのプロジェクトは広く人材と供給元を求め、プロジェクトが完了すればバラバラになってまたそれぞれのプロジェクトに向かう。小さないくつものかけらが、柔らかく関係する、それがマローンの予測だった。

ところが実際の現場では逆のことが起こったように見える。大企業は更に規模を拡大した。ゴールドマン・サックスは年間9兆円を飲み込み、年間収益は3倍増した。製薬会社はM&Aを繰り返して巨大化し、ウォールマートやGEを含めるフォーチュンのトップ10内の企業は規模が3倍になった。

そして昨年9月に世界はリセッションに突入した。投資会社は莫大な負債を抱え、ビッグ3は倒産寸前、製薬会社はヒット商品を生み出せず、ウォールマートは店舗を縮小している。

マローンは正しかったのか。

過去9ヶ月で起こっているのは大きさの清算だ。大企業はキャッシュフローのみではやり繰りできず、負債を必要とする。また大きな投資を必要としてはいるが、流通網にコントロールを失い、多文化な世界規模の競争に晒されている。投資へのリスクは拡大している一方で利回りは悪化している。更に大きさはより厳しい規制を受け、柔軟に動けない。大企業が勝てて来れたのは、変化のスピードの緩やかな時代での話。

次のニューエコノミーは、小ささに有利に作用する。

デトロイトを救うのはテスラなどの新興会社の技術であったり、グーグルのビジネスがこれまでのような堅い握手ではなく冷徹な数学に支配されていたり、クラウドコンピューティングがITへの大規模な投資を必要とさせなくなっていたり、零細企業が世界販売戦略を立案できたり、アーティストがPCのみで楽曲を制作できたり。

無意識の起業家精神が、無数の会社を設立させ、契約社会を加速させ、フリーランスという職業を増加させる。「変化」を求めるそうした小さな企業が新ニューエコノミーのエンジンとなる。

2009/05/27

オンライン社会主義

ビル・ゲイツはかつてオープンソース推進者を資本主義の根幹を揺るがしかねない現代の共産主義者だと評した。オープンソースは共産主義というよりは自由主義であって、ゲイツの見解は間違ってはいたが、それでも現在のウェブの進化は新しい社会主義をもたらしていると言える。

Wikipediaが一番良い集産主義の例で、Creative Commonsの著作権制度の人気やP2Pの人気が集産主義に拍車をかけている。

ウェブ業界を席巻するカリフォルニアでは、すでにオンライン社会主義と呼ぶべき現象がいくつも存在する。Web3.0の幕開けとして現在も爆発的成長を続けるFacebookやTwitterは、グーグルが君臨している現在の検索世界に新たな風穴を開けようとしている。「今」を追求するリアルタイムウェブがウェブをどこに連れて行くのか。

ウェブ業界も比較的保守的な日本では、そうした世界の趨勢とはちょっと違った方向性を持っているが、それでも世界の動きを完全無視して我が道を行くことはできないだろう。日本発の次の仕掛けが何も出てこないからだ。であるならば、世界に渋々追随するしかない。

Linuxのようなオープンソースソフトウェアなど、無数のユーザーが共通の目的を共有し、労働を無給で提供し、完成品を誰もが無料でシェアする。これは立派に社会主義と呼んでもいい。

オンライン社会主義が醸成される土壌として以下の項目があげられる。

1、共有する意志

個人的な家族写真でもビデオでも日記でも知識でも何でも共有する意志は凄まじいものがある。こうした共有サイトはどんどん出来上がり、天文学的な成長率でアップロードされている。

2、協力

無秩序にアップロードされたデータを整理する機能を持つサイトもどんどん登場している。ブックマークサイト、ランキングサイト、キーワード、カテゴリー。Creative Commonsの著作権制度も無秩序な共有を制度化して円滑にしようとするものだ。あなたの写真は私の写真。エッフェルタワーの写真がひとつのアングルであるならば、他の人が撮ったあらゆるアングルのエッフェルタワーの写真を集合させて360度見えるサイトができたりする。

3、共同製作

オープソースがいい例だが、こうした共同製作に関わる人のスキルが非常に高く、対価なくスキルを提供するオープンソースは資本主義では不条理でさえある。

4、集産主義

共同製作との違いは、誰が責任を取るのかということ。自主的に誰かが責任を取り、重要な制作決定には全員が参加するというのが集産主義の理想だが、WikipediaやLinux、OpenOfficeはそうではない。Wikipediaへの投稿は数百万人がするが、編集は1500人程度の人間が行っている。これは別段悪いことではない。階層性で上手くいくものもあれば、そうでないものもある。

一方でウェブの進化は行き過ぎた個人主義、自由主義への信仰を生むとされるが、他方でこうした共同制作、集産体制で生産する。「無料」を享受するかわりに、「無償」を提供する。そういうことだろうか。



2009/05/25

本のデジタル化 今度は本当?

音楽、映像に続いて本がいよいよ本格的にデジタル化するのか。電子書籍の可能性は随分前から予見され、複数のメーカーから電子書籍専用端末が発売されたがすぐに生産中止となった。購入可能な書籍数の少なさが壁となった。

それでも日本では市場規模はまだまだ紙媒体に比較すれば小規模だが確実に書籍の電子化は進んでいる。特に携帯にダウンロードする方法がメジャーだ。

海外では、ネット小売りのAmazonが今夏に販売開始予定のKindle DXに期待が寄せられている。Arizona State Univ.のAdrian Scannierなどは、Kindle DXが期待され続けてきた書籍革命を本当に起こすと見ている。それはKindle DXの技術からではなく、Amazonの圧倒的な流通市場のシェアと、Kindle DXに協力するメジャーな出版社の存在からだ。Kindle DXには、アメリカ教科書書籍市場の60%を占める出版社3社、Cengage Learning、Pearson、Wileyが協力する。Kindle DXが書籍版のiTunesとなれると見ている。




ビデオの通りKindle DXのサイズは大きい。3500冊分の書籍を保存でき、275,000冊の書籍がKindle Storeで販売されるらしい。ニューヨークタイムスベストセラーも112タイトル中107タイトル入っている。価格は489ドルだ。

大きさは新聞や雑誌まで様々な媒体を網羅するためで、電子書籍端末にある目の疲れもないらしい。スクリーンはPCスクリーンのようではなく、本物のインクのように見えるらしい。

販売される書籍はAmazonで紙媒体を購入するよりも35%ほど安く設定されるようだ。

それでも英国図書館のStephen Buryは書籍革命には否定的だ。まず価格が高すぎることで、購入に積極的になるのは55歳以上ではないかとしている。さらに本当の本好きならば図書館で本を見つける楽しみを忘れられないだろうと。

また、問題点として情報格差も心配されている。高額な端末が普及することで安価な書籍の流通が減少し、知識を得ることが経済的弱者には難しくなるのではないかという。アフリカ諸国ではこの問題に敏感で、ネットアクセスもまだ3%程度で通信費も高額な地域では、子供たちの教育の観点から著作権侵害の特例を設定すべきだとの声もある。

Kindle DXはまだアメリカのみで販売中だ。

2009/05/24

リアルタイムウェブとグーグル

SNSやTwitterなどのマイクロブログは、リアルタイムウェブと呼ばれる。今現在何が話題になっているか、「今」を追求したのがリアルタイムウェブだ。よってこうしたサービスで飛び交う情報の賞味期限はもの凄く早い。

グーグルはこのリアルタイムウェブの脅威を認めている。アナロジーとして、大学生が図書館でリサーチするのがグーグルなのに対して、大学生がカフェなどで友人などと会話をするのがリアルタイムウェブだ。逆に言えば、何か調べものをする際にはリアルタイムウェブは全然適していない。

グーグルの検索機能は、このカフェでの会話を拾い上げることを主眼としていず、リアルタイムウェブの急進的な成長で明らかになりつつあるWeb3.0に遅れているとも見ることが出来る。YouTubeを買収したようにTwitterを買収することで解決を図ることもできるが、Twitterは身売りしないことを宣言している。世界制覇を目論むグーグルが何もしないということはないはずだ。

ウェブが「今」に標準を合わせようとしていることは、著作権侵害の分野にも影響を及ぼしている

リアルタイムウェブで紹介された著作権を侵害するビデオなどは、一瞬にして多くのユーザーに伝達され、権利者が気付く頃には視聴し尽くされているといったことも起こりうる。視聴数がゼロ回から100万回までの到達スピードはどんどん早くなっている。ウェブ上でのリンクの大部分が、こうしたリアルタイムウェブでのリンクとなっている。

アメリカのDMCA法は、権利者が権利侵害を常に追いかけるようにデザインされていると見ることも出来る。ビデオ配信サイトのJustin.tvは、プロスポーツからしばしば試合の生中継をユーザーがビデオカメラで撮ったものを配信しているとして非難を受けるが、指摘を受ける頃には問題の配信は終了していることが多い。

また、Twitmaticは、Twitterで今現在どんなビデオが一番視聴されているかを検索できるサービスだが、権利者の指摘を受けて削除されたビデオは一切ないとCEOのPatrick Koppulaは言う。つまり追いついていないのだ。

しかし逆にこうしたビデオ配信サイトがリアルタイムで著作権侵害をモニタリングし始めると、DMCA法がサービスプロバイダーに不利に作用する。つまり著作権侵害コンテンツをアップロードしたユーザーの責任ではなく、配信したSPの責任が問われるようになってしまう。

ちなみに北京オリンピックの映像がYouTubeで流れなかったのは、VobileとAttributorというモニタリング会社が逐一記録していたかららしい。


2009/05/23

P2P人気ランキング

BayTSP、アメリカのP2Pモニタリング会社の調査による世界のP2P人気ランキングが発表されている。それによれば、世界のP2Pシステム利用の90%はBitTorrentとeDonkeyで占められている。当たり前だがWinnyの名前は出てこない。

eDonkeyは主にヨーロッパで利用されているようだが、ユーザー数の関係でダウンロードにかかる時間はBitTorrentの4〜16倍だ。動画投稿サイトなどのユーザーアップロードの頻繁なサイトに比べれば著作権侵害のボリュームはP2Pが圧倒的だ。それはそうだろう。無料コンテンツを手に入れようという確信犯なのだから。

国別著作権侵害数を見ると、スペインが1位で、2008年で2470万回、2位はイタリアで1920万回、3位がフランスで1790万回、4位がアメリカで810万回、以下イギリス、ブラジル、ドイツ、ポーランド、イスラエル、カナダと続く。この数字はBayTSPの契約するクライアントのコンテンツの侵害数であって、全体では恐らくこれの数十倍にもなろうか。

コンテンツ業界が仕掛ける広告モデルの無料コンテンツ配信サイトが今後は増加するだろう。BayTSPのCEO、マーク・イシカワもクライアントのコンテンツに収益をもたらすため、ビデオ投稿サイトと協力しているらしい。

フランスで可決されたスリーストライク法がもたらすネットアクセス遮断の被害者が一日1000人にもなるという予測も出ているが、P2Pユーザーを弾圧するだけではコンテンツ業界の苦しみは終わらない。HuluやiTunesのように「無料」にも勝てるモデルの構築が唯一の解決策だろう。

2009/05/22

ダウンロードの10年間 その5:モバイルの10年間

theglobeandmail.comの特集「ダウンロードの10年間」の第5弾は、次の10年間を予測する。その主役はモバイルだ。興味深い記事なのでぜひ全文を読んでみてください。

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「コンピューターが過去20〜30年間を変えたエンジンだとするならば、今後10年を変えるエンジンはモバイルだ。」マイケル・ジョーンズは言う。

メディアコンテンツを1と0の数字に変換して世界に滞りなく一瞬で転送する技術は、基本的に消費者がコンテンツを享受する方法を変革した。PCはただのタイプライターではなくなり、メディアを消費し、またコンテンツを世界に発信するハブとなった。

そのハブを使えば、誰でもアーティスト、作家、ビデオグラファーになれる。2008年にネット上にアップロードされたデータ量は4870億GBにもなる。2時間の映画がだいたい700MBだから、映画6960億本の計算になる。2012年までにはデータ量はこの5倍になることが予想されている。

物質的メディアコンテンツを製作してきた古いメディア企業は、この新しい現実に対処を迫られている。収益を出しながらどうやってデジタルコンテンツを製作していくかが、生き残りの条件になる。

CDはiTuneと違法コピーに飲み込まれ、DVDもオンデマンドやネットを介在した提供モデルに飲み込まれることが確実だし、Kindleは出版社を追いつめる可能性に満ちているし、新聞は増々読者に課金することが難しくなっている。

デジタルメディアの将来は基本的な2つの課題を中心に進む。消費者はどうやってコンテンツを享受するのか。そして、誰がそのコンテンツの製作費を支払うのか。

ネットで無料で手に入れられるコンテンツをお金を出して買おうとするひとは少数派だ。iTuneで50億曲が販売されたが、95%のデジタル音楽は違法コピーからのダウンロードだ。「無料」は、新しいメディアの現実だ。遅かれ早かれ、デジタルコンテンツは無料になるか、無料と競うことになる。

広告収入がその代替となることが現在予想できる主な収入源だが、世界的大不況で広告出稿は全産業で落ち込んでいる。景気が回復する頃には、もっとたくさんのデジタルコンテンツが広告とセットになっているだろう。

次の10年は、モバイルが支配する。BlackBerryやiPhoneといった機器は、PC体験を跳ばしてコンテンツをいつでもどこでも享受できることを可能にしている。

アップル社は昨年全米でiPhone3Gをリリースすると同時に、アプリストアもオープンさせ、ユーザーがiPhoneの中身をコントロールできるようにした。ゲームやその他のソフトを無料や有料でダウンロードでき、自分のiPhoneをカスタマイズできる。iPhoneに続けとばかりに他の携帯会社はアプリストアをオープンさせている。

そのアプリの中にはすでに消費者のコンテンツ享受の方法を変革しているものもある。Slacker Radioなどのネットラジオアプリは音楽ファンに新しい新人アーティスト発掘の方法を提案しているし、2年後には子供は全員スマートフォンを使用する。音楽の次はビデオだ。すでにNHLを生中継で見れるようなサービスもある。他にもSNSとGPSを組み合わせたものや、音楽ダウンロードとコンサートチケット販売を組み合わせたサービスがある。人々のメディアコンテンツとの関わり方を変革してる。

世界人口の6人に5人はネットアクセスがない。次の10億人にネットアクセスがもたらされる時、彼らはPCを跳ばしていきなり携帯に入る。新しいアイデアや経験が、とてつもない影響をメディアの革新にもたらす。

約10億人がネットに生活の隅々まで依存している。ネットアクセスがあるということは、人間であることの一部であると言えるところまで来ている。



2009/05/21

Google CEOへのインタビュー

イギリスのファイナンシャルタイムスがGoogle CEOのEric Schmidtにインタビューしている。話題は新聞社の未来、ネット広告、独禁法に及ぶ。フルインタビューはこちらで。

●新聞の未来

人々はすでに色々な機器で色んな方法でニュースを読んでいる。新聞はそのひとつに過ぎない。新聞社に必要なのはそのすべてを繋ごうとすることだ。Googleや他のネット企業と組んで様々な方法を試すべきではないか。高度に専門的なニュースにはプレミアムが付き、課金することも可能だろうが、一般的なニュース(大統領が今何をしているかなど)に課金することは現実的ではない。課金できない一般的なニュースがアマチュア化していくことは止めようがないのかも知れない。

ワシントンポストと話し合いを持っているのはGoogleが新しい機器を作り出そうとしているのではなく、ウェブ上でのニュースのあり方について話し合っている。新聞社の非営利化については、新聞社にはずっとあった問題だ。もしそれが可能になるならば、Google基金のようなものが必要になる。ニュースポータルと新聞社の収益の分配については否定的だ。ニュースポータルが新聞社に提供しているのはトラフィックで、このトラフィックを利用してさらに深いコンテンツを用意することも重要なのではないか。


2009/05/20

ファイル交換は「フェアユース」?

アメリカはハーバード大学法学教授が、P2Pシステムで著作権で保護されたコンテンツをダウンロードすることは、それが営利目的ではなく、個人的な視聴目的でなされたものならばそれはフェアユースに該当するとの主張をしている。

ハーバード大学法学部教授の肩書きを持つチャールズ・ネッソンは、P2Pで違法に音楽をダウンロードしたとして提訴されているジョエル・テネンバムの弁護として、法廷で証言した。

この主張はコンテンツ業界の違法ダウンローダー撲滅キャンペーンに批判的な専門家でも頷くことができないほど斬新な法解釈で、弁護士のローレンス・レッシグなどはフェアユースの規定を広範囲に解釈し過ぎていると反論している。

アメリカ著作権法のフェアユース規定には、フェアユースと認められるための4つの要素として裁判官が考慮する項目は、
1、利用目的とその性格
2、著作権保護されているコンテンツの性質
3、使用された部分の量と重要度
4、潜在市場に対する使用の影響
とされている。個人的に音楽を楽しむためにダウンロードされたというだけでは、これら4つの項目をクリアにしているとは言い難いが、ネッソンは4つすべての項目で被告の行為はフェアであるということを立証するとしている。

同じくハーバード大学の著作権フェアユース専門家のテリー・フィッシャーは、P2Pダウンロードそのものは上記の4つの要素にパスしないと見る。「これは司法がP2Pダウンローダー個人を標的にして損害賠償責任を負わせることが妥当だというのではなく、フェアユースの考え方でそれを改革することに無理があるということだ。」

しかしネッソンは違法ダウンローダーの弁護で司法の解釈を変えていく気があるようだ。フェアユースを考慮する4つの要素の加えて、5つ目の要素を主張する。権利者側のコンテンツ出版に伴うP2Pシステムなどによる違法コピーのリスクを予測できていたか、という要素らしい。

夏にマサチューセッツではじまる連邦裁判にてネッソンが勝つとするならば、すべての非営利のP2Pダウンロードは合法となる。当然、原告の音楽業界は猛烈に反撃する。

2009/05/19

ダウンロードの10年間 その4:カナダの事情

カナダ紙、theglobeandmail.comの特集記事「ダウンロードの10年間」の第4弾は、米国通商代表部が先日発表した301レポートから始まる。カナダは先進国で唯一、最重要監視国のリスト入りし、米国からの知的財産権保護強化の圧力に更にさらされることになった。

カナダの国会議員にとって著作権法の改正案はとても敏感な問題で、過去10年以上も各政権は改正案を可決しようとしたが、すべてが失敗している。1996年にカナダはWorld Intelletual Property Organizationのインターネット協定に批准しているが、自国の法律で承認していない。

カナダのコンテンツ産業の規模は、2008年で約7.4兆円、GDPの約7%となっている。32%のソフトウェアは違法にコピーされ、被害額は1200億円になるとの調査がある。

Pirate Bayの運営者を有罪に追い込んだ後、全米レコード協会と全米映画協会の次のターゲットとなるべき人物はバンクーバー郊外にいる。Gary Fungのサイト、isoHuntとTorrentBoxもPirate Bayと同様にP2Pファイルのリンクをインデックスして検索できるサービスを提供している。月間ユニークユーザー数は4000万だ。すでに全米映画協会とカナダレコード協会と、ふたつの訴訟を抱えている。

Fung氏によれば、リンクを掲載することに何の非もない。ウェブ上にはコピーされたコンテンツが溢れかえっており、それら違法コンテンツのリンクを掲載することの責任を問われるならば、児童ポルノや特許侵害などの違反をインデックスする大手検索エンジンも責任を問われるべきだと言う。(そうした主張は有罪判決を受けたPirate Bayの運営者も裁判で行ったが、結果は有罪だった。)

著作権法改正への圧力は今後どんどん増していく。フランスがスリーストライク法を可決させた。ネットアクセス遮断までの制裁を法律にすることはカナダでは現状難しい。それでもISPに対して登録ユーザーの著作権侵害への責任を何らかの形で強化させたいはずだ。

アメリカの著作権侵害モニタリング会社、BayTSPによれば、著作権侵害が深刻な先進国はカナダではなく、イタリア、スペイン、そしてフランスだとしている。問題はカナダがアメリカの隣国で、メジャーな貿易相手国だという事実だ。この重要な貿易パートナーに対して、アメリカはより著作権の保護を求めている。

2009/05/18

ウェブが革命的な変化をもたらす?その考えは危険だ

イギリスの著名なジャーナリスト、Bryan Appleyardが、同国のタイムス紙に寄稿してウェブの進化に警笛を鳴らしている。Appleyardが58歳で、ジャーナリストであるというところは、世界で止めどなく加速するウェブを危惧するひとりであることの資質になるだろうが、ウェブが世界を変革することが目に見える昨今、こうした反論は大変貴重だ。

まず、Appleyardはウェブが最近起こしてきた問題をあげる。アメリカのcraiglistに売春広告が多くなり過ぎて性犯罪の温床になっているという批判から、craiglistはアダルト関連広告を禁止した。フランスのL'Orealのコピー商品がeBayで販売されることを禁止できなかったこと。Googleのストリートビュー機能が、世界各地でプライバシー問題を引き起こしていること。Googleのパワーはどんどん増殖し、連動型広告で個々人に適した広告をあらゆるウェブ活動のなかで叩き付けられること。

次にウェブの技術は、核や蒸気や電気のように、世界を変革するテクノロジーではなく、新聞やテレビなどように、ただのコミュニケーションツールに過ぎないとする。

さらに、ウェブが最もその変革をもたらしたものは、徹底した個人主義だと言う。これは頷ける。ブログ、マイクロブログ、SNSなど、個人が世界にマーケットできるツールが爆発的に成長している。Googleのパワーの源泉は個々人に適したマーケティングができるところだ。

「それの何が悪い?個人はやっと自由を手に入れたのだ。」シリコンバレーのカリフォルニア人は言うだろう。

既存の制度や体制や機関をぶっ壊した。そうしたこれまでの体制や機関は、個人などよりももっと役に立つことをできる。社会に資するものを提供できる。個人がネットで提供できるのは、冷静になって見れば陳腐で低俗なものでしかない。

ウェブが個人に与えた自由は、集団で協調して努力するということの足かせになっている。出版社、新聞社、博物館、大学、学校といった機関はのそもそもの存在理由は、個人でやるよりもずっと優れたことができるからだ。

さらに、個人主義への行き過ぎた偏りは、期待されるようなハイパー民主主義をもたらさない。Wikipediaは、当初の理念と違い、あらぬ書き込みを制限するために検閲をせざるを得ないはめになったし、ブログの世界では、組織化された巨大ブログが寄生虫的な精神でメインストリームメディアに日々噛み付いている。Twitterですら、もうすでにオプラ・ウィンフリーのような芸能人の独断場となりつつある。

さらに悪いことは、行き過ぎた個人主義は奴隷的恭順性へと行き着く。誰もが個人として独立できるわけではない。支配するもの、支配されるもの、情報を発信するもの、情報を与えられるもの。テクノロジーのスピードと知的多様性は、正比例しない。インターネットは文化を殺す。

ウェブが個人に与える自由へのカルト的盲信。これが最大の問題だ。だが、ロシアなどはこの問題をネットアクセスを一方的に遮断することで一気に殲滅した。

新世界は訪れない。ウェブが物質世界を変えることはない。

日本の代表的掲示板である2ちゃんねるなどを見れば、この反論の正当性が理解できなくもない。

最新ニュース 文書共有サイトScribdの新サービス -NYT

概要
様々な文書をサイト上で閲覧できる、文書版youtubeと言われる、文書共有サイト「Scribd」は、著者や出版社が同サイトでデジタル作品を販売できる新しいサービス「Scribd Shop」を始めた。価格は自由に設定でき、売上の8割が取り分となる。デジタル作品には、ダウンロード不可、コピー防止機能を有したセキュリティソフトを施すことができるが、AmazonのKindleやその他モバイル(あるいは、ゆくゆくはiphone)で閲覧できるように、PDFで公開することも可能。

出版社は電子書籍におけるアマゾンやグーグルの優勢に対して危機感を抱いているため、Scribdとの関係に積極的。

ただ、Scribdは、著作権侵害の問題を抱えている。ユーザーたちにより、無許諾でデジタルコピーされた海賊版が当サイトに投稿されるためである。その対策として、権利作品のデータベースを構築し、システムにフィルターをかけており、今後、Scribd Storeに参加した出版社の作品も、順次データベースに追加されていくという。

いまのところは、まだ大手出版社の参加予定はないが、自社の全作品をアップするところも、独立系の出版社で出てきているとのこと。
-5/18 The New York Times
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2009/05/17

新聞業界、破綻の足音

アメリカ議会で新聞社の未来に関する公聴会が開かれ、インターネットに移行する現在の過程で苦労している現状を法律によって打破する提案が、メディア業界側の弁護士によってなされている。ワシントンポストに提案を寄稿したブルース・サンフォード弁護士は、ジョン・ケリー上院議員が委員長となった公聴会では、ひとつの重要な事実を認識していないとし、その認識のもとに議論を展開する。

今現在ネットを席巻するグーグルを筆頭にしたネット企業も、設立当初は収益化に随分苦労しており、政府によって与えられた法律を傘にして急成長を遂げることができた、という認識だ。

グーグルCEOのエリック・シュミットは、消滅が心配されているジャーナリズムをウェブ2.0でしかと確立させるために必要なことは、新しい商品・サービスを発明することだ、少なくともグーグルならそうする、と発言した。

サンフォード弁護士は、グーグルも検索エンジンがウェブサイトをインデックスする際にウェブサイトオーナーの許可を得る必要性を免除されたからこそ今のグーグルがあると主張する。

弁護士が提案するジャーナリズムの未来を手助けする法律は以下の通り。
・検索エンジンのサイトインデックスを著作権法違反にする。
・“ホットニュースドクトリン”の法律化。
・メディア所有制限の撤廃。
・税金の優遇制度の導入。
・独禁法の適用免除。

ベン・カーディン上院議員が新聞社の非営利化を提案している。非営利化しなければこれらの提案は行き過ぎだ。ジャーナリズムが死滅する危機感は共有されてしかるべきものだろうが、ジャーナリズムは新聞社の特権ではない。ジャーナリストになるために資格はいらない。全米の大学でジャーナリズム学部があり、倫理や記事執筆のテクニック、取材の方法など教えているが、不祥事は絶えない。ついこの間まで、新聞配達の少年が教育もロクに受けずにそのまま記者になっていた。ブロガーにジャーナリズムができない理由などどこにもない。

弁護士の提案には、当然のごとく猛烈な反対意見が出ている。その反論の主な要点をまとめる。

ウェブはリンク経済であるということ。検索エンジンというリンクの大元がなければウェブ経済自体が破綻する。さらに、知識は共有されなければならない。新しい知識はウェブアップした数秒後には共有される。誰のものでもなくなる。

新聞社のビジネスモデルの基礎は、編集力と供給力だ。ネット以前は新聞社がニュースを独占し、どのニュースを新聞に掲載するか決定する。マーケットに供給する数量も調整可能で、それによって広告価格をつり上げた。ネットはこのビジネスモデルの正反対を行く。誰でもいつでもどこにいても好きなだけあらゆるニュースを読み、掘り下げることができる。そうなればマーケットも無限に拡大し、広告価格は限りなくゼロに近づく。

オンラインニュースの収益化は、そうした状況では誰であっても難しい。課金制度、訴訟、または法律でも収益化を可能にはしない。

コンテンツが「無料」になることはニュースばかりでなくコンテンツ業界では共通の問題だ。ましてニュースはエンターテイメントではない。ニュース自体に課金することの愚かしさに気付くべきだろう。

2009/05/16

ダウンロードの10年間 その3:コピーが何故悪い?

theglobeandmail.comが掲載している特集記事「ダウンロードの10年間」の第3弾は、コンテンツ業界が躍起になっている違法コピーの是非を問う。

大学生が怪しげな外国のサイトでコピーした音楽のコレクションをiPodで聞く。ベストなクオリティーを求めなければ、無料で入手できる音楽はネット上にごろごろしている。音楽レーベルはビジネスを失う恐怖に襲われて必死になって違法ダウンローダーを訴追する。その一方でアップル社のように急成長する会社も存在する。

P2Pシステムでファイルを交換すること自体は著作権侵害者ばかりでなく、医者、大学教授、弁護士まで利用していて、ファイル交換はもはや現代人の生活の一部だ。

Pirate Bay運営者4人への有罪判決は世界へのコンテンツ業界からのメッセージだった。違法コピーは悪いと。海賊版は悪いと。それでもそのメッセージは今日の若者に受け入れられていない。2001年にNapsterが廃業に追い込まれたときも受け入れられなかった。全米レコード協会がファイルシェアラーに対して初めて陪審員裁判を起こして22万ドルの賠償金支払いの判決が出たときも、受け入れられなかった。

ネット小売りのAmazonがコンテンツ業界の最後の被害者となるかもしれない出版物をKindleによってデジタル化販売する昨今、コピーや海賊版は悪いことだというメッセージは果たしてユーザーに受け入れられるものなのだろうか。ユーザーが、はいそうですかと引き下がるのだろうか。

西洋文化はこれまで文化的創作物は制作者のものなのか、社会のものなのか、それとも人類のものなのか、判別することが難しかった。19世紀に違法にコピーされた出版物を著作権法によって潰したとき、利用者の知識を得ることの権利に反抗するものとなった。

文化というものに対して、一般人は最も簡単で便利な方法でアクセスを求めてきた。「無料」で素早く簡単にコンテンツを入手することができるインターネットというツールは、その一般人の求めを十分に満たすことができる。コンテンツ業界がやろうとしていることは一般の利用者にとって簡単で便利に享受できるはずの「文化」を、著作権法によって制作者のものにしてしまおうとするもので、当然受け入れ難い。

経済の観点からすれば、もちろんこれまでたくさんの雇用を生み出してきた業界のビジネスモデルが崩壊すれば、多くの人が路頭に迷い、製作コストも回収できないから「質」の高いコンテンツが減少、もしくはなくなるということは理解できる。

しかし、近年のカンヌ映画祭を見ればわかるし、ボックスオフィス(興行成績)のラインアップを見ればわかる通り、コンテンツ業界は文化以上にビジネスになり過ぎた。それは消費者の嗜好だとか教養レベルとかの問題ではなく、ただ単により収益性を求めた結果だ。芸術性の高い映画はもれなくヒットしない。カンヌ映画祭が年々白けていく原因のひとつだろう。

海賊版はコンテンツ売上げをプロモートするという議論もまだ聞かれるし、多くの専門家が業界の違法コピー撲滅キャンペーンに苦言を呈している。

違法コピーは消滅せず、これからもずっと我々と一緒にあるとすれば、その位置づけはマリファナ、道路横断、買春などのように認知されている社会的タブーのようなものになるのではなかろうか。よって違法コピーは特に若い世代にとって常に周囲に存在する誰もが一度は通過する軽犯罪のようなものか。

コンテンツ業界のすべきことは、違法コピーや海賊版が悪いことだとして撲滅することではなく、正規品を購買することこそ正しくて大人な行動だということをキャンペーンすべきなのではないか。

2009/05/15

インドのトップ20サイト

インド、Software Engineerを多く排出している国だ。インドのSEは世界中のテクカンパニーに存在し、先進国のネット企業の屋台骨となっている。アメリカの人種別で見た所得が一番高いのは、実はインド系アメリカ人だ。移住するインド人のスキルは医療やITの分野で非常に高く、逆にスキルの低いインド人が移住することが少ない。スキルのないヒスパニック系移民との違いは鮮明だ。

そのインドの有望なサイトトップ20を地元のメディアが紹介している。

ソーシャル・キャリアネットワーキングサイト。Hotmailの開発者のSabeer Bhatiaをディレクターに置き、15名で運営されている。

PowerPointファイルを自由にブログ、携帯、YouTubeなどでシェアできるサイト。登録ユーザーがPowerPointをアップすると、そのURLとコードが送られ、ユーザーはブログやサイトに貼付けることができる。PowerPointがなくてもそれは見ることが出来る。

SNS。ターゲット対象は世界中の若いインド人。

SNS。

5:Burrp
レビューサイト。インドのローカル情報をユーザーが投稿する。

アパートに居住する人のコミュニティーサイト。隣人同士が地域の情報などを投稿してシェアする。

SNS。

SNS。

9:ibibo
SNS。主に若いユーザーが自分の才能をプロモーションする場となっている。

様々なテーマに沿ってユーザーが投稿する情報サイト。ウィキペディアのようでもなく、2ちゃんねるのようでもない、オーガナイズされたトピックごとのレビューや口コミ。

文化人、著名人のコメント、解説を掲載したサイト。ユーザーはコメントできる。

Bollywoodを中心としたエンターテイメント中心のSNS総合サイト。

13:Kreeo
個人法人対象のコレクティブインテリジェンスを集約して低コストで最大化する。

14:Kwench
企業の従業員対象のオンライン図書。

15:Kwippy
Twitterのインド版。

オンラインのユーザー日記帳。テククランチの記事はこちらから。

P2Pの技術を活用したオンラインビデオコミュニケーション。

教育、キャリアの特化したSNS。

子育てに特化したオンラインコミュニティー。

モバイルからビデオや写真をアップできるSNS。

2009/05/14

ダウンロードの10年間 その2:iPod

カナダのニュースサイト、theglobeandmail.comの特集「ダウンロードの10年間」の第2弾は、アップル社のiPodを取り上げている。重要なポイントのみ要約するが、全文はこちらからどうぞ。

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2001年10月23日、アップル社のスティーブ・ジョブズはジャーナリスト達にはじめてiPodを披露した。ジョブスのジーンズのポケットからスラリと出したその機器は、ジャーナリストの期待を超えるものではなかった。

翌日、ニューヨークタイムスはビジネス欄の8ページ目に記事を書いたが、扱いは大きくはなかった。当時のMacPCの市場シェアは5%でしかなく、マイクロソフトに独占され、アップル社の株価も低空飛行を続けていた。iPodはMacでしか音楽を入れられず、その事実がある限りiPodはエキサイティングなものではなかった。

しかし、その後のコンテンツ業界の変遷はiPodの先見性を見事に証明してみせた。音楽に限らず、映像や文学、デジタル化できるすべてのものは、P2Pシステムの登場によりどんどん低価格化していき、エンターテイメントを享受するための対価は限りなくゼロに近づく。無料という最大の敵と戦うことをコンテンツ業界は新たに宿命付けられた。

コンテンツを製作し、製品化して流通させる一連のコストがなくなると同時に、小売店などは淘汰されていった。音楽小売りのWorld MusicやTower Record、新聞社のSeattle Post IntelligencerにRocky Mountain News、レンタルチェーン店のBlockbuster、消費者の「無料」という価値感に抗った会社に潰れるケースが多いし、倒れかけている会社はなお多い。

「無料」の価値観に対抗せず、消費者の求めているものの先を読み、サービスを打ったアップル社は今や巨大なエンタープライズと化した。企業価値は約11兆5000億円、デジタル音楽プレーヤー市場の70%を得とくし、地球上でも最も強力なIT企業のひとつだ。

ISPはブロードバンドの普及で体力をつけてモバイルネットワークに乗り出し、PCメーカーやソフトウェア会社、更にマイクロチップ製造会社は、消費者のもっと膨大なデジタル情報を素早く安価に手に入れられる電子機器を、との消費者需要に後押しされて波に乗る。

消え行くビジネス、力付くビジネスの差は、デジタル技術を恐れず、無料の価値観を受け入れたということか。

レコードからカセットテープ、カセットテープからCDへの技術革新に対して、音楽業界はコントロールできた。その消費者に対して持っていたコントロールの力が、デジタル化、ファイルシェアリングでなくなっている。

2000年から2008年までの約8年間で、世界の音楽セールスは3.6兆円から1.8兆円へと半減している。デジタル配信でダウンロード販売されたのはそのわずか20%。ネットからダウンロードされる音楽の95%は違法だ。音楽レーベルは著作権侵害容疑で違法サイトを追う一方で、リストラを進めて生き延びている。かつて持っていたような大量のアーティストを抱える余力はない。製品化と流通販売インフラを支え切れていない。レーベルは違法に入手される質の低い音楽に消費者はなびかないと見ていたが、消費者は質よりも無料を取った。

アップルは、こうした違法で無料の音楽を享受する音楽ファンでも、楽しい音楽視聴体験を提供できればそれに対する対価を支払う気があると見た。本当に質の高い音質、超早いダウンロード、超早いペイメント。音楽ダウンロードは消費者にとって便利で楽しい体験であるべきで、無料で入手できる代替品があったとしても質が悪くて遅くて楽しくなければ消費者はなびかない。

iTuneとiPodは、「無料」にチャレンジして、勝利した。


2009/05/13

テレビ業界の実験、Hulu

ハリウッドが世界中でP2Pをはじめとしたオンライン著作権侵害の弾圧に積極的に動いている背景には、コンテンツ業界の押えきれない感情が根底にある。恐怖。

すでにネットの進化は既存ビジネスを法で縛り付けておくだけでは守ってくれない。デジタル化されたコンテンツは自由にネット空間を高速移動し、どんなコピー防止技術を弄しようとも、一度無料利用の味をしめた一般ユーザーはそれをいとも簡単に破ってしまう。こうなれば既存ビジネスを守ることの出来る唯一の方法は、ネットを退化させることだけだ。そして民主主義社会である限り、それはインターネットでパワーを得た個人が許可しない。最後の手段は、個人からインターネットを取り上げることだ。よってアクセス遮断の制裁に行き着く。

特にハリウッドのビジネスは世界市場があってはじめて成り立つ。大きくなりすぎてそうなってしまった。巨額の制作費をかけて製作されるコンテンツは、世界という市場があるからこそ。その世界で、P2Pシステムの著作権被害は甚大だ。

ハリウッドもウェブの進化に対抗するばかりではない。無料でコンテンツを視聴できるサイト、Huluを昨年オープンさせるも、そのあまりの急成長ぶりに困惑している。今や視聴数でYouTubeに迫る勢いを見せている。

広告によって支えられているHuluは、これまでのハリウッドのビジネスに比較すれば収益では小さなものだ。このままどんどん成長してYouTubeを抜いてエンターテイメントの終着点になろうとも、これまでの市場の代替になるわけがない。よってアナリストも投資家も映画スタジオの役員も、Huluの成長を素直に喜んでいない。

ハリウッドスタジオの収益の2本柱は、DVDの販売とケーブルチャンネルへのコンテンツ供給だ。今日記事になっていたが、アメリカでは多くのファンがダウンロードよりもDVDを購入している。ケーブルテレビはアメリカでは普及率が高く、複数のチャンネルをパッケージで月額課金するのが一般的だ。ケーブルテレビ会社は人気のある目玉番組をハリウッドスタジオから買ってチャンネルパッケージを売り込む。人気番組は非常に高値で売れる。利用者にしてみれば、見たくもないチャンネルも当然たくさんパッケージに入っているから損をしている気分にもなる。

これまでケーブルテレビで見ていたドラマなどが無料でHuluで視聴できて、しかもあるソフトを使えばHuluで配信される番組をテレビで見ることも出来る。そうなればケーブルテレビなど必要性がなくなってくる。Huluの加熱ぶりに黙っていられないのが、ケーブルテレビ会社だ。

すでに新聞社が倒壊の危機にさらされており、Huluで墓穴を掘ってビジネスモデルを壊すなら、ハリウッドも倒壊する。よってHuluは人気ドラマを急に削除したり、連続ものを最後まで配信しないなどの措置をちらほら取っている。視聴者の一部は怒りのコメントを寄せている。

「それならP2Pでダウンロードだ!」

最新ニュース 特集 文学界を襲うPiracy -NYT

概要

音楽業界や映像業界では、ここ十年、おなじみのことだったが、文学作家や出版社にとっては、「Kindle」(Amazonが提供する電子書籍リーダー)の時代は、まったく未経験の恐ろしい世界である。これまでは、「ハリーポッター」シリーズなどのベストセラー作品のデジタルコピーを、限られた人々が嗅ぎ付けていたぐらいだったのが、ここ数ヶ月で、「Scribs」(文書共有サイト。アップされた文書はFLASHに変換される。また、PDFやテキストでのダウンロードも可能にしている)や「Wattpad」(同様に文書共有サイト。このほどiPhone、iPod touchに対応)などのサイト、「RapidShare」(一般的なファイル共有サービスサイト。スイスで運営されている)や「MediaFire」(同様にファイル共有サービスサイト。こちらはアカウント不要で共有ができる)といったファイル共有サービスにおいて、海賊版が爆発的に増殖しているという。

Hachette社は、同社法務部が、違法サイトの追跡のために相当な時間をとられていることを嘆き、また、John Wiley & Sons社では、このために専従のスタッフを擁し、先月には、5000通もの警告文を送付したという。これは昨年の5倍の数字に跳ね上がっているとのこと。

SF作家アーシュラ・K・ル=グウィン(Ursula Kroeber Le Guin;「ゲド戦記」の作者)は、ウェブサイト「Scribd」を追っていた。彼女の作品に極めて類似したいくつかの本のデジタルコピーに遭遇したためである。ロングセラーの作品「闇の左手」の一つのコピーが含まれていた。ル・グインも出版社も、電子出版の許諾を行ってはいない。文学界に静かに増殖しているデジタル海賊版。「なぜ、彼らは、私の著作権を侵害し、それでうまくやりおおせると考えられるのかしら。」と、ル・グインは言う。


作家であり、アメリカSFファンタジー作家協会の会長でもあるラッセル・デイヴィス氏は言う。「もぐら叩きですよ。一匹たたくと5匹飛び上がってくるんです。」

「Scribd」や「Wattpad」などは、大学の論文や自主作品をアップロードするようにユーザーへ呼びかけている。しかし、有名な作品がこれらのサイトに現れたことで、ここ数週間、業界から槍玉に挙げられている。

両サイトとも、一度警告を受けたような違法な本については、すぐに削除すると言う。著作権保護された作品がアップロードされたら特定できるようにフィルターを設定しているという。

いくつかの出版社は、この問題がクローズアップされるとますますコピーが増える恐れがあるとして、コメントを控える傾向を見せてきている。

かつて、Napsterのように、音楽業界において、産業全体に苦渋を味わわせる脅威となったファイル共有サービスではあるが、さしあたり、書籍における電子海賊が、同様に拡大するかどうか。

音楽業界の先例では、業界のオンラインストアの整備もままならない中、ユーザーやNapsterに対し、徹底的に法的手段に訴えたことで、ファンの反感を買った。もしiTunesが、3年早く始まっていたら、Napsterや後続の海賊行為の環境がどれだけ大きくなったかというと分からないと思う。なぜなら、人々は、決まって、悪質だと見なされない価格で、合法的に購入するのを常としているからである。」とBertelsmann(ベルテルスマン社:ドイツの複合メディア企業。世界で最も大きな出版社「ランダムハウス」のオーナー企業)の会長は語る。

AmazonのKindleや、SonyのReaderなどが普及するようになれば、デジタル版で読むことが容易になってくる。無許諾にアップロードされているデジタル版の多くはPDF形式であり、それらをKindleやReaderに簡単にメールで送ることができる。

作家達の反応:

スティーブン・キング氏は、eメールで次のように語っている。「問題は、こういった輩を追いかけることに、どれだけの時間とエネルギーを費やしたいのだろうかということ。そして一体いつまで。こういう人たちの多くは、Funioin(リング状のスナック菓子)や安いビールで生きながら、カーペットの端切れを敷き詰めたところで生活しているんだろうね。」


「金儲けではなく、支払ってくれと言っているだけだ。」とは、ハーラン・エリスン氏(Harlan Ellison:短編集「世界の中心で愛を叫んだけもの」の著者)の言。エリスン氏は、9年前に、彼の4つの物語を違法にアップしたユーザーに対して止めさせるようにISPを訴えた。

他方で、デジタル海賊版を、新たな読者が作家を探し出す方法と見る作家もいる。昨年、ニューヨークタイムズ紙の子供部門でベストセラーリストに7週間ランクインした青年向け小説「Little Brother」の作家コリイ・ドクトロウ氏は、ハードカバーで出版した日に、無料の電子版を提供している。彼は、無許諾のものも含め、無料版が、新たな読者を誘い出すものと信じている。 -5/11 The New York Times
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2009/05/12

コンテンツの教育現場での利用は著作権侵害か?

米国著作権局が3年に一度開いているDMCA法免除の特例を審査する4日間に及ぶ審査が終了した。DMCA法はDVDコピー防止技術の回避を禁止しているが、この禁止の免除を個別の案件にて審査し、許可されれば免除される。

大学の映画学部や映像専門学校などでは、編集などの練習で著作権で保護されている映画などの映像コンテンツを授業で使用する。インストラクターはDVDから映像を切り出し、学生に講義するために利用する。3年前の審査では大学の図書館は、DVDコピー防止機能を回避することを許可された。

今回また同じように審査に出されたが、今回はこの特例をすべての大学教授に広げようとした。映像コンテンツの権利者側も、教育目的でコンテンツが利用されることは反対していない。権利者側が敏感になっているのは、DVDコピー防止の技術が、いとも簡単に回避されることのようだ。よって映像はDVDから切り出すのではなく、ビデオカメラで映画館などで撮影したものを使用してくれとの要望があった。

DVDコピー防止の技術は既に破られまくっており、それ自体にあまり意味がなくなっている。映像コンテンツ業界としては、本当に無意味になってしまう前にRealDVDのようなソフトを見つけては法的に対処しようとしている。

もうひとつの解決策としてコンテンツ業界が提案しているが、スクリーンキャプチャーできるソフトで映像を記録し、授業で使用するその都度、書面による権利者の許可を取るというやり方だ。高品質のビデオカメラを買うか、いちいち権利者の許可を書面で取るか、教育現場にさえ著作権侵害の訴訟をちらつかせて脅してくる業界はどうなのだろうか。

「あたかも大学教授が、小学生すら使いこなしているようなコピー防止回避を使用するこに対して信頼できない潜在的著作権侵害者のように扱われることは侮蔑以外の何でもない。」大学側の弁護士は言う。


アルゼンチンでは、哲学教授がフランスの哲学者ジャック・デリダの著作をスペイン語翻訳してウェブ上にアップしたことで、著作権侵害に問われている。この教授はデリダの著作のみならず、ニーチェやハイデガーの著作も過去同様に翻訳してアップしていた。

問題は、アルゼンチンの出版業界の事情で哲学書はアルゼンチン国内にほとんど扱われておらず、あっても高額な場合が多い。お金に余裕のない学生には高価な代物となっている。よって哲学書だけでなく大学では教科書などのコピーが蔓延しており、当然こちらも著作権の侵害に当たる。教科書の価格が高すぎることはアルゼンチンに限った問題ではなく、そうした問題のある国の大学でコピーは普通になっているとさえ言えよう。

知的財産の強い先進国の政府はコンテンツ業界からの圧力に抗しきれず、こうした教育現場での著作権侵害の弾圧も進行中だ。アルゼンチンの哲学教授は指摘を受けた哲学書翻訳をウェブ上からすでに削除している。

Fundacion Via Libre、アルゼンチンの非政府組織は、このケースは現行の著作権法がいかに時代に見合わなくなったかを示す好例だ、としている。

2009/05/11

ダウンロードの10年間 その1:Napster

カナダのwww.theglobeandmail.comが「ダウンロードの10年間」と題した特集記事を始めた。P2Pの登場から約10年を経過し、P2Pが文化やビジネス、はたまた世界に与えた影響を掘り下げる。第1回目は、すべての始まりとなったNapsterを取り上げる。記事は非常に長く、Napsterの設立者であるショーン・ファニングへのインタビューや当時の全米レコード協会との軋轢など、詳細に書いてあるが、個人的に面白いと思う箇所をかいつまんで要約してみたい。全文はこちらでどうぞ。

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1999年1月、前年9月に大学に入学したばかりの18歳のショーン・ファニングは、入学したばかりの大学を退学してP2Pシステムの構築に専念することを決める。ファニングはたったひとりでシステムのすべてを構築し、同級生が大学1年を終える6月、作業が完成する。

ファニングのP2Pシステム以前にも著作権侵害やファイルシェアリングは存在したが、ファニングのNapsterはPCに強いオタク以外の一般人にも、コンテンツというものは無料で入手できるということを広める。その影響力は急拡大し、それまでのビジネスモデルを破壊し、また新しいビジネスを生み出し、消費者にとって善と悪の区別を不明確にし、いまだ様々なビジネスがその影響に苦しめられている。

P2Pシステム完成から6ヶ月後、ソフトのダウンロード数は200万件を超える。ファニングはシリコンバレーに近いサン・マテオに居を移し、叔父のジョン・ファニングとともに会社を設立する。同時に全米レコード協会との折衝にも入る。

1999年12月、全米レコード協会はNapsterを著作権侵害で提訴する。訴訟は2年を要し、アメリカ司法をインターネットの時代へと誘い、政治家も巻き込んでの大論争となる。メディアをこぞって報道し、皮肉にも世界にP2Pを知らしめることになる。

2000年2月、Universal Musicの親会社であるSeagramはニューヨークにて世界の役員を招集してミーティングを開く。音楽業界としてはNapsterが世界に浸透して音楽が無料だと認識される前に、音楽のデジタル販売を確立しなければならないとした。6ヶ月以内に。

実際は6ヶ月どころか2年を要することになる。その間に、投資家が動き出す。2000年5月、ハンク・バリーという投資家が13億円を投資し、バリーはその後18ヶ月にわたりNapsterのCEOを務める。

7月、アメリカ議会が公聴会を開き、Napsterは世界の音楽レーベルとの交渉に入る。また連邦裁判所がNapsterに著作権を侵害しているとの判決を出す。すぐに控訴され、その間Napsterは運営され続けた。

2001年2月控訴審判決もNapsterの有罪となり、2002年5月、破産に追い込まれた。音楽業界ははじめからNapsterとまともな交渉をするつもりはなく、着々と自身の配信サービスを完成させており、Napsterのユーザーに対しては5万件を超える数で訴訟を起こすことになる。

メタリカのドラマー、ラーズ・ウルリッチをはじめとしたアーティストも議会などで証言し、Napsterに強硬に反発した。一方でNapsterを使いながら成人したGirl Talkなどマッシュアップアーティストなどは、昨年のアルバムチャートで4位に入るマッシュアップアルバムを制作するなどしている。

Napsterの登場で特をした業界が、ISPだ。それまでダイヤルアップ方式でのネットコネクションが主流だったものが、Napsterを利用したいが為にブロードバンドに乗り換える客が急増する。これはカナダでも同様で、ブロードバンドの普及は1999年を境に増加している。

それまで苦戦を強いられていたアップル社も、Napsterの爆発的な普及を目にしてユーザーが音楽をどのようにして楽しみたいか、消費したいかを理解したという。2003年のiTunesに結実する。

Napsterの名前は、ファニングが学生時代に付けられたあだ名だそうだ。ファニングは髪の毛を洗わないことが多かったらしく、その髪は紙おむつ、“Nappy”のように見えたからだとか。

最新ニュース-米連邦高裁 Yahoo へコンテンツの責任を認める判決

8日、米連邦高等裁判所は、オレゴン州在住の女性が、関係が疎遠となった男性によって、ヤフーのソーシャルサービスである「Yahoo Profile(リンク先は日本語版)」に、彼女のヌード写真や、仕事先、メールアドレス、電話番号などの個人情報や、性的な関係誘惑するような情報を掲示された事件で、同女性によるYahooへの削除請求を認容する判決を下した。

彼女の仕事先には、当該プロフィールを閲覧した人々から、性的な内容の電話や、メールなどが多数寄せられたという。また、テレビニュースなどで本事件が取り上げられるまで、ヤフーは、同女性へ何の対応も取らなかったとも。

97年に連邦最高裁判所により、いわゆる米国通信品位法(Communications Decency Act of 1996;米国電気通信法第5編。わいせつ、暴力などの番組についての規制)についての違憲判決以来、ユーザーのコンテンツに対する責任から、言わば、免除されてきたISPにとって、この判決は、重要な意味を持つと考えられる。 -5/8 Reuter
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2009/05/10

フェアユース、事例その1

先月、ラスベガスでミスUSAコンテストが開催され、その際の候補者の発言が波紋を呼んでいる。候補者はミス・カリフォルニアで、審査として行われたインタビューで、同性愛者の結婚を政府機関が認めるべきか否か問われ、彼女(Carrie Prejean)は自身の信条として結婚は男と女の間にのみ成立すべきだとテレビで答えた。

問題はその質問をした審査員のPerez Hiltonが自身のブログで彼女をこき下ろし、同性愛者の結婚に反対する団体であるNational Organization for Marriageがその両方のビデオを抜粋した広告を制作してテレビ放映したことに始まる。

Perez Hiltonは勝手に映像を使われたとして、著作権侵害を理由にこのテレビ広告の即時廃止を弁護士経由で通達し、ミスUSA側も同様の訴えを起こした。National Organization for Marriage側は抜粋はフェアユースに当たるとして全面的に反発している。

ビデオを見ればお解りの通り、使用されたビデオは1分間のCMの中のわずか7秒にしかなってない。逆にPerez Hiltonは、自身のブログでこの問題を扱ったCNNの報道を10分間にわたって丸々掲載している。専門家に言わせれば、著作権侵害の訴えはまったくのお門違いで、これがフェアユースに当たらないとすれば何がフェアユースなのかわからないそうだ。

このPerez Hiltonという人物は有名人のゴシップネタを扱う自身のブログで巨大な読者数を得とくしており、その影響力は小さくない。よって彼がミスUSAの審査員に選ばれたし、彼のCarrie Prejeanへの反論が大手メディアでも取り上げられた。

さらに、同性愛者の結婚を認めるか否かの問題はアメリカではヒートアップしていて、サンフランシスコを皮切りに既にいくつかの地域で同性の結婚が認められている。キリスト教信者が多い共和党支持者はこれに猛反対していて、憲法改正も視野に入れて同性愛結婚を禁止しようとしている。

Perez Hiltonはどうやら同性愛者のようで、Prejeanの発言に過剰反応したのだろう。そのPrejeanもまた、豊胸手術を受けたことなどを暴露された。それでも発言には後悔しておらず、現在はNational Organization for Marriageに入会しているらしい。

YouTubeも、一旦はテレビ広告を取り下げたものの、フェアユースに当たるとして再アップしている。アメリカのフェアユース規定が曖昧なために、しばしばこのようなことが起こる。

2009/05/09

ニューメディアはオールドメディアを征服したか

アメリカの新聞社が次々閉鎖している。ネットメディアが本格的に読者を得とくし始めてから、新聞はリストラを進めるなどして延命策を図ってきたが、ついに既存のビジネスモデルが崩壊を食い止められないところまで来た。

AP通信はポータルサイトなどのニュースリンクを集めるサイトに宣戦布告したし、マードックは自社のニュースサイトを課金制にする計画を発表した。

ブログメディアの発達はアメリカで著しいが、ブロガーはそれで生活しているわけではなく、要するに既存メディアと潰し合いをしていて、ジャーナリズムが死滅するとの心配もされている。アメリカ議会は新聞社の将来の役割について公聴会を開いている。

マイナーなブログも多いが、メジャーな新聞社に匹敵する読者と影響力を持つメディアに育ったブログも多い。そのひとつが「The Huffington Post」だ。The Huffington Postは2005年にアリアナ・ハフィントンが始めたリベラルブログで、今年2月には月間890万PVあったとされる。BBCやワシントンポストなどと肩を並べる。オバマ大統領が、選挙期間中に彼と関係のある教会の牧師の人種差別的発言が報道された際にも、一番に弁明の投稿した。そのアリアナ・アフィントンがインタビューに答えている

曰く、「ネットメディアは新聞やテレビなどのオールドメディアを征服する過程にある。今後は市民ジャーナリズムがどんどん出てくるだろうし、ネットも新聞もテレビも記事などのコンテンツを自社の販売チャンネルのみで独占することはできない。そうしようとすれば必ず失敗するだろう。何故ならデジタル化された経済は、リンクされた経済だからだ。ブログサイトも新聞サイトもリンクすることで相互にトラフィックを集めており、このトラフィックを収益化につなげようとすることが肝心だ。つまり、コンテンツを守ろうとするのではなく、ユーザーが何を欲しているのか考えること。このような状況で生き残るのは、優れたコンテンツを提供できるメディアのみで、ジャーナリズムは生き残るどころか、良いものは繁栄する。」

優れたコンテンツ、優れた記事は生き残るだろうが、それが面白くなければ誰も見ない。地方の小さな街の議会や警察に番記者として張り付き、権力を監視するという重要なジャーナリズムの役目がなくなるのではないか

「既存ジャーナリズムの制限は、番記者として取材の対象に深入りし過ぎてることで、一般の読者が必要としている情報、“真実”を報じることが出来ていない。」

一般のユーザーが何を欲しているのか、何を必要としているのか、そうした問いは新聞社の社員として記者クラブ入りするジャーナリストよりも、どうにかしてトラフィックを収益化しようと考えているブロガーの方が答えを探しやすい位置にいるのかも知れない。

それでも、ブログメディアは偏り過ぎているとの批判をかわすことは難しいだろう。現にハフィントンポストはリベラル派の代表格で、共和党支持者が読者である確立はずっと低いはずだ。ネットメディアでは、ユーザーは自分の興味のあるものしか見ない。そしてそれは、ネット世代の若い有権者がオバマを当選させたように、一般人(ユーザー)のちからが増大したということに間違いはない。

2009/05/08

スペイン、もうひとつのP2P大国

P2Pユーザーの多い国としてここ2ヶ月ほどPirate Bay裁判で世界中の注目を集めていたスウェーデンに並び、P2Pネットワークでの著作権侵害の盛んな国がスペインだ。オバマ政権が先日発表した知的財産権保護の取り組みの甘い国々をリストにしてあげた301レポートの中でも、先進国として名を連ねていた。

TorrentFreak.comがそのスペインの事情を解説している。スペインでは、P2Pネットワークを使用したファイルの交換は合法であり、かつPirate BayのようにP2Pシステムのリンクを検索できるサイトも、著作権侵害を助長するという判断はされていない。MPAA(全米映画協会)によれば、映画のダウンロード数は昨年一年間で3億5,000万回もあったらしい。更にゲームは5,000万タイトル、音楽に至っては20億曲ダウンロードされたとのこと。67%のネットユーザーがP2P経由で無料コンテンツを入手し、24歳以下に至っては81%に上がる。

スペイン政府も何もしていないわけではなく、ファイルシェアリングサイトに対して法的措置を取ってきたが、スペインの著作権法では有罪とすることがかなわず、被告は例外なく無罪となっている。

アメリカはスペイン政府への圧力を強めており、コンテンツ業界とISPとの間でスリーストライク法に似た制裁の取り決めを促している。それが法律でかなわないなら、法律を変えるべきだとしている。

それでも、スウェーデンのPirate Bay裁判の有罪判決はスペインに影響を与えているようで、ED2Kと呼ばれる種類のP2Pリンクサイトが二つ裁判所命令によって閉鎖されている。スペインの音楽業界団体が起こした民事訴訟の結果となっている。

無料コンテンツを公明正大に享受してきたスペインのユーザーも黙っておらず、業界団体の事務所前などで海賊版CDを配布するなどデモを起こしている。

2009/05/07

P2P著作権侵害、業界はISPを標的に

P2Pがネット上に登場して既に10年近くが経過する。その間、最も甚大な被害を受けたとされる音楽業界は、ネットワーク上に作品をアップロードしたユーザー個人に対して訴訟を起こしてきた。その最もたるものがアメリカの全米レコード協会だ。協会が侵害者を法的に追い始めてから既に3万件以上の訴訟を起こしたと見られている。標的になるのはP2Pのヘビーユーザーである大学生などだ。数十万円にもなる損害賠償額をその都度請求する。ある意味、日本のJASRACのようなもので、犯罪であることには違いがないが、情け容赦ない。

協会が起こしてきた裁判のほとんどの詳細を掲載しているサイトがあるのでリンクを貼っておく。http://info.riaalawsuits.us/documents.htm#Virgin_v_Marson

協会が本腰を入れてこれまで音楽作品の著作権を侵害すると判断されるユーザーを訴えてきたが、それによってP2Pでの音楽ファイルの交換が減少しては来なかった。個人をターゲットに訴訟をバンバン起こしてもそれがネットが抱えている著作権侵害の問題を解決することに繋がりはしないとの指摘があった。

昨年末、協会はようやくそのことを認識し、アメリカ議会に個人を対象に訴訟を起こす戦略から舵を切るとの証言をしている。協会は今後ISPとの協調体制を確立するとしている。最終的にISPにやらせたいのはスリーストライク制裁のようだ。著作権を侵害するコンテンツをアップロードしたユーザーのアクセスを遮断するというものだ。もっとも、こうした過激な制裁はヨーロッパでもニュージーランドでもユーザーの猛烈な反発で反故にされている。アメリカでも既に協会に対しての批判は多い。

だが、業界側の決意は固いようだ。EU議会によってその実現化がほぼ無効になったフランスのサルコジ大統領肝煎りのスリーストライク法に関して文化相は、EU議会の決定はフランスの法律に影響しないと発言しており、さらに“世界中で市民にネットアクセスを保証している国はない”と豪語している。

ドイツではISPが侵害ユーザーのIPアドレスを音楽レーベルに提供したことが発覚しているし、ニュージーランドではスリーストライク法の成立を完全には諦めていない。更に、台湾では著作権法を改正し、DMCA法に近いISPの損害賠償の責任制限を与えると同時にスリーストライク制裁を義務付けている。国際レコード連盟もISPに対して侵害を助長するサイトの閉鎖を求めていく方針だ。

P2Pでの著作権侵害を止められない理由のひとつとしてあげられているのが、Staggered Releaseと言われるコンテンツのマーケティングの方法だ。すべての市場で同時にコンテンツをリリースするのではなく、話題性を醸成する目的で市場ごとにリリースの日をずらすやり方だ。

ネットやラジオやテレビなどで新曲を聞き、欲しいと思ってiTuneなどで買おうとしても販売されいないというケースが多々あり、そうした場合にP2Pなどで入手する人も多いのではないかという指摘だ。P2Pの利用者もそのコンテンツのファンである場合が多いだろう。何が何でも無料で手に入れると思っているわけではないのではないかという。

ユーザーの団結した反対がない限り、ISPは制裁を強化せざるを得ない状況に追い込まれるのではないか。

2009/05/06

オンラインのいじめ

中高生がネットの掲示板での中傷などが原因で自殺する事件は日本でも過去にあった。名誉毀損とは別に、アメリカではネットでの誹謗中傷、さらにいじめを禁止する法律が提案されている。法律を用意しているのは下院の14人のみで、成立するかどうかは不安視されている。

法律はアメリカで起きたある事件が契機となっており、その事件に過剰反応した一部の政治家が2度と同じようなことを起こしたくないとの理由で用意されているのだろう。

その事件とは、49歳の母親が13歳の娘が同じ年の女の子にオンラインで悪口を言われていることに対しての仕返しとして、架空の人物をオンラインで作り、女の子にコンタクトを取り、仲良くなった後に冷たく突き放して、それが原因で女の子は自殺した。

気の毒な話ではあるし、母親のモラルも問われるべきだが、このようなネット上でのいじめが原因で中高生が自殺するケースは恐らくキリがないだろう。ネット上でなくとも思春期の学生であれば過剰な反応を見せることも多い。

加害者と被害者の自宅は近所で、3件隣りだったようで、少女の自殺から間もなくことの発端が発覚し、加害者の母親は近所で“人殺し”などと呼ばれた。少女の自殺から1年後、少女のおばが地元のメディアに投稿し、すぐにネット上で話題となり、母親の名前や住所や電話番号まで掲載されることになった。それ以来母親も誹謗中傷を日常的に受け、娘も学校でいじめに遭い、そうしたネット上での加熱ぶりから、地元の検察が動いたらしい。

ところがネット上でのいじめに対抗する法律がないから、母親が架空の人物を作成する過程で正規の手順を踏んでユーザー登録しておらず、ハッキングを禁止する法律で母親を起訴した。母親は軽罪で有罪判決を受けている。

専門家からは、無理やりこの母親を起訴する検察のやり方に批判が上がっていて、サイトの同意事項に違反すれば起訴できるという悪例を作ったとしている。

問題としたいのは、こうした市民が主導して新しい法律が準備されるということが日本で活発に起きるようでなければ、著作権問題でも力のある企業のいいように法律を整備されるだろうということだ。

2009/05/05

ネット検閲、最悪の国々

ニューヨークに事務局を置くCommittee to Protect Journalistsが、「ブロガーにとって最悪の場所」という見出しでネット検閲の厳しい国々をあげている。

「ブロガーは情報革命の先頭に立っており、その数は急速に増加している。」ディレクターのジョエル・サイモンは言う。ブログメディアは既に既存報道メディアを凌ぐほどの情報を発信し始めており、海外では非常に高く評価されている。その一方でアジアや中東の国々では政府に批判的な投稿をするブロガーへの検閲も厳しくなっている。お隣韓国でブロガーが逮捕起訴されたことは記憶に新しい。

第1位に選ばれた軍事政権の続くミャンマーのネット検閲は非常に厳しい。政府はネットアクセス自体の普及に消極的で、ほとんどの市民はネットカフェなどでオンラインとなるようだ。こうしたネットカフェへの検閲も厳しく、Eメールなども政府フィルターを通される。少なくともブロガー2人が刑務所に入っている。

第2位のイランは、政府やイスラム教への批判の検閲が厳しい。ブロガーは自分のサイトを当局に登録せねばならず、背教や売春や腐敗を導くと判断されるブロガーには死刑が適用される。

第3位のシリアも反政府的投稿するネットユーザーは拘束されるなどの処置がある。ネットカフェ利用者の身分証を提出させるなどの対策を講じている。

キューバでは、共産党の党員か共産党関係の人間にしかネットアクセスがない。一般の人々はホテルやネットカフェを利用する。

サウジアラビアも既に数百万の“有害”サイトを閉鎖したとしており、影響力のある宗教指導者も、違反者にはむち打ちや死刑などの制裁を提案している。

ベトナム政府はネット事業者にブロガーの情報提供を要求しており、昨年にはブロガーが脱税の罪で30ヶ月の懲役の判決を受けている。

チュニジアでも、ISPに登録ユーザーのIPアドレスや個人情報の提出を義務づけている。

3億人のネット人口を抱える中国の検閲システムは世界でも比類ないほど完成されており、少なくとも24人が刑務所にいる。

トルクメニスタンでは、2007年に初めてオープンしたネットカフェが軍によって警備されたという。検閲も完備されており、利用料も高額だったようだ。

エジプトでもネットトラフィックの全てが政府検閲を通過する。2008年のみで100人以上のブロガーが拘束されたらしい。

ネットに国境がないとは言え、まだまだ多くの国々ではネットアクセスがない地域も多いし、政府検閲も厳しければネットが本当の意味でのグローバルビレッジとなる日は遠いのかも知れない。それでも先進国を中心に情報革命が起きているのは事実で、アメリカのボストンでは、有力紙のボストングローブが閉鎖に追い込まれている。日本でもブログメディアの地位の向上に期待したい。

2009/05/04

著作権法の改正とフェアユース

ニュージーランドで著作権法の改正、どころかリニューアルが準備されている。3回著作権を侵害した者のネットアクセスを遮断するスリーストライク法を、現在の保守政党が握るKey政権が猛烈な一般ユーザーとISPの反発で著作権法改正から削除した経緯がある。明らかに世界の知的財産権保護の動きに合うもので、権利者側の意向が反映される内容を用意する可能性が高い。

だが、スリーストライク法がオンラインコミュニティーの強力なデモなどで潰されたことは、今後の著作権法の書き替えの展望を明るくしてはいない。一般ユーザー、利用者側の意見を無視した法律の制定は困難だと見られている。

スリーストライク法はニュージーランドで世界初の法律が可決成立した。法律施行となる今年2月に路上でのデモやネット上のキャンペーンなどによって停止された。フランスで同様の法律が再提出されたが、もし可決するならば、何だってデモするフランス国民のことだから黙っていないだろう。

知的財産が主要産業でもあるアメリカのリーダーシップで(主にハリウッド)、世界的に著作権侵害への締め付けは強化されている。アメリカのDMCA法のような法律の制定を望んでいるのだろう。その中でもフェアユース規定は非常に曖昧なもので、アメリカの著作権侵害関連の訴訟で必ずと言っていいほど持ち出される。

しかしフェアユースはコンテンツの利用者にとってみれば必要な規定だと思う。コンテンツの流通にも大いに寄与する。アメリカのフェアユース規定の中にはパロディーがあり、権力批判の方法として最も効果的な風刺として広く認知されている。これはフェアユース規定があればこそで、日本でパロディーが社会風刺として確立しない遠因があるとも思う。導入には個別の裁判に委ねるような曖昧さを排除すべきか。

コンテンツの権利者が自ら指定するコンテンツの利用条件の制度化を目指した「クリエイティブ・コモンズ」の提唱者であるローレンス・レッシグ教授が、デジタル社会では「売り手側が、文化的コンテンツをいかに使うかを制限し、利用を厳しく管理している」と言ったが、正しくその通りだと思う。ネットという表現のためのツールはどんどん進化しているのに対し、表現の方法や範囲が法律によって縛られていることがコンテンツ不足をもたらしているのではないかとさえ思える。有害コンテンツや違法コンテンツは取り締まる必要があるし、ハリウッドなどが既存のビジネスを守ろうとすることはわかるが、表現の自由を奪ってしまえば民主主義の活性化の観点からも良くない。

政府の知的財産戦略本部が、日本版フェアユースの導入を提言した。だが提言したのみで今国会に提出されている著作権法改正案にしても基本問題小委員会の会合にしても、フェアユース規定について前向きに議論されている様子が伺えない。

利用者側の意向を踏まえた議論をもっと期待したい。

2009/05/03

ブログが新聞に取って代わる日

アメリカでは次々と地方紙が閉鎖している。デンバー、シアトルなどに拠点を置く地方都市の有力紙が新聞の発行を停止している。替わりに出てきているのが役所のプレスリリースやブログ記事を集めたサイトだ。

日本でも既に起きている現象だが、既存のニュース発信をする新聞社などの組織よりも、ブログの情報の方が早く、詳細に特定の事件事故を記述している場合も多い。

一部では日本のブログ人口は世界一だという調査もあり、もっともっとブログというメディアが既存報道機関を凌ぐ調査伝達能力を見せてくれてもいいと思うのだが。日本のブログは情報発信というよりは、アフィリエイトとして、マーケティングツールとして使用されているケースも多いと思う。しかもアクセス重視で内容が伴っていない。更にアダルトサイトへの誘導を目的としたアフィリエイトが圧倒的に多い。ブログ人口を増加させた一番の要因はこのアダルトアフィリエイトではないかと個人的には思う。一時期、これで簡単に儲けたアフィリエーターも多かったが、最近はこの増加にも歯止めがかかったのではないか。増え過ぎて簡単ではなくなっているからだ。

日本ではこれからも既存メディアが力を持って情報発信していくことは間違いない。地方に行けば行くほど過疎化は深刻化しており、ネットを情報源として使用している人口も極端に低い。そこではこれまで通り地方紙が毎朝届ける情報が一番の信頼できるソースということになる。アメリカのようにはいかない。

積極的に自分の街の情報を発信していこうとするアメリカの地方の一般人が多いのに対して、日本のブロガーたちの文化の違いは歴然としている。誰も気にしない小さな街の情報など発信するよりも、全国的にテレビなどで取り上げられた話題を掘り下げる方が面白い。誰もが共有できる情報に飛びつく。

ネットが最もターゲティングに適したメディアだとするならば、日本のブログ文化はそれを十分に生かし切れていない。ブログが個人の情報発信メディアとして成熟し、新聞にとって代わるほどの情報の量と質を提供し、一般に認知されるようになるまで、一体どれくらいかかるのか。個人が個人として社会的な強者となれるツールがインターネットなのだから。

デジタルコンテンツでよろしく

ネット空間におけるエンターテインメント業界の状況を鑑みると、「デジタルコンテンツそのものの対価」で、いかに収益構造を確立していくのが困難であるかが窺われる。ウェブ通販を絡ませた「現実物」の取引仲介という形では、例えば、アマゾン、楽天などの例を挙げるまでもなく、ほぼ収益構造は確立し、ビジネスとして充分に成り立っているようである。

しかし、ネット上で取得できる情報(デジタルコテンツ)が、基本的に無料として認識されている状況では、あらゆる分野で、「デジタル化されたコンテンツそのものの対価を徴収する」という仕組みでは、充分に収益が上がるビジネスとして確立されてはいないように思われる。このモデルで成功しているエンターテインメントは、ほとんど唯一アダルトのジャンルであるが、この場合も、特殊な条件(例えば無修正)において、更には、月額の会員料を徴収するという形で成立していると言われており、コンテンツそのものの対価だけで、コンテンツの製作費用や、サイトの運営費、その他諸々の販管費等々を回収できるかというと難しいだろう。

この点で、佐藤秀峰氏の試みは注目に値する。氏は、研修医を主役とし、医療業界全体に潜在する問題について、丹念に掘り起こし描いた作品「ブラックジャックによろしく」で、一躍ベストセラー作家になった漫画家である。元々、作品を発表していた講談社「モーニング」編集部との間で問題を抱え、その後、公表の場を小学館へ移したものの、最終的には、自主運営サイトでの作品発表という道を選んだ。それが上記のような「デジタルコンテンツ」のダウンロードに対する対価徴収による収益モデルであった。

プロの漫画家が、出版社を川上とする既存の出版流通から飛び出して、自前のサイトで作品を発表し収益を上げていこうという今回の試みの行方は、漫画というジャンルに限らず、クリエイター主導により、このネット空間に新しい価値観に基づくシステムを構築しようとしているという点でも、重要な意義を持っているといえよう。ただ、上記において付言したように、これまでのネットビジネスにおいて短いながらも蓄積された経験からは、デジタルコンテンツに対する対価徴収というビジネスモデルの成功は、現実的には、極めて厳しいと言わざるを得ない。

今後の展開としては、おそらく、累積したコンテンツを紙媒体に落とし込み、自身運営のウェブ上での通販や、アマゾンなどのウェブ通販と連携し、「現実物」を販売することも考えているのであろう。結果的に、二大出版社との間で問題を抱えてしまった氏の作品について(氏自身が望むかどうかは別にして)、日本におけるトーハン、日販の二大取次が扱ってくれるのかどうか。あるいは、書店との直取引ということも考えられる。営業については、出版営業代行の会社はいくらでもあるので、そういう会社と契約することもできるだろう。

いずれにしても、今後の行方を注視したいモデルケースであると言えよう。

2009/05/02

カナダの著作権侵害対策、甘い?

アメリカの通商代表部(Office of Trade Representative)というところが毎年発表している貿易国の知的財産権への保護度をランク付けたレポートが今年もリリースされた。中国とかロシアとか、想像するだけで保護の甘そうな国は当然毎年ランクインしているが、今回アメリカのお隣のカナダが中国やロシアと同等にランクインしたらしい。

レポートは要するにハリウッドやシリコンバレーなどアメリカの主要産業のコンテンツやソフトなどの知的財産権を他国で外国政府に保護するようにケツを叩くもので、12カ国が最重要監視として挙げられている。

中国、ロシア、アルジェリア、アルゼンチン、チリ、インド、インドネシア、イスラエル、パキスタン、タイ、ベネズエラ、そしてカナダだ。

その他にも要監視リストとして33カ国が挙げられている。

ベラルース、ボリビア、ブラジル、ブルネイ、コロンビア、コスタリカ、チェコ、ドミニカ共和国、エクアドル、エジプト、フィンランド、ギリシャ、グアテマラ、ハンガリー、イタリア、ジャマイカ、クエート、レバノン、マレーシア、メキシコ、ノルウェイ、ペルー、フィリピン、ポーランド、ルーマニア、サウジアラビア、スペイン、タジキスタン、トルコ、トルクメニスタン、ウクライナ、ウズベキスタン、ベトナム。

先進国でこのリストに入っているのは、カナダと北欧の国々、そしてスペインとイタリアだ。北欧ではスウェーデンの例があるように、著作権侵害が犯罪であることの認識が薄いのかも知れない。スウェーデンがこのリストに入ってないのは、Pirate Bay裁判で有罪判決を出し、裁判長が著作権侵害を糾弾する権利者側の業界団体の理事を兼務しながら、それを不問にしようとしているように、政府機関は弾圧に積極的なのだろう。

カナダに関して言えば、私も違法サイトを追う立場にあるからわかるのだが、アメリカにいた違法サイトは南米に逃げ、一部はカナダに逃げたことからもわかるように、カナダの著作権対策では簡単にいかない。ISPへの責任が軽いのだ。アメリカのDMCA法ではISPに対し、著作権を侵害しているデータの削除を義務づけている。カナダのISPはその必要がない。著作権侵害を疑われているユーザーデータを、証拠があっても裁判所命令がなければ開示する必要がない。

フランスでスリーストライク法が再提出された。問題なければ可決されると見られている。世界中の各国政府はアメリカに引っ張られ、知的財産権の積極保護へ舵を切った。

2009/05/01

ABCとHuluのコンテンツ供給の意味するところ

Walt Disney傘下のABCが、無料動画配信サイトのHuluに自社のコンテンツを供給することになった。ABCは、「ロスト」「グレイズ アナトミー」「アグリーベティー」などの人気コンテンツを抱えている。

Huluは広告によって支えられている、無料動画を配信するサイトで、アマチュア作成の動画はなく、テレビ番組などの2次放送がほとんどだ。残念ながら日本からは見れない(あるソフトをインストールすれば見れるらしいが)。メディア王のマードックのニュースコーポレーションとNBCユニバーサルが合弁で昨年立ち上げた。視聴数も急上昇しており、3月にはユニークビューアーで4,180万に達している。

今回のABCのHuluの資本参加は、一体どのような意味を持っているのか。それは、Huluがディズニー、NBC、フォックスとメジャーな映画スタジオ6社のうち半分のコンテンツを押えた点だ。残りの3社、ソニーはHuluとYouTube両方にコンテンツを提供するし、ワーナーブラザースはウェブ配信自体に乗り出していない。最後のパラマウントは、Huluに一部のテレビ番組を提供している。

よって今回のニュースはYouTubeにとってあまりいい話ではないらしい。YouTubeは事業の黒字化を実現するために今後、プレミアム動画や月額で課金するシステムも導入すると見られているが、プロ制作のコンテンツが集まりにくいことがあげられている。

YouTubeの特性はそもそも誰でも簡単に動画を投稿できることで、テレビ番組や映画の2次放送の場ではない。そうであればYouTubeが2次放送専門のHuluにコンテンツを独占されるとしてもこれは当然の帰結だろう。

問題は、ウェブ配信の広告モデルが今のところ成功しているHuluのやり方を、他の動画サイトが追随していくことだ。収益にこだわって不採算部門を切り落とすなら、個人にとって企業と同等の情報発信ツールとしてのサイトが減少するのではないか。

Huluとしても、ネットで広告収入を満足に得るためには大量の広告を付ける必要があるそうで、テレビドラマなどの連続ものの全話放送を控えているようだ。それはDVD販売にも影響が出るとの懸念からでもあるようだ。

いずれにしてもHuluは、コンテンツを保有する権利者側が収益を出せるネット配信モデルとして立ち上げたわけで、そこには著作権侵害の恐れもないし、そういった意味でYouTubeとの性格を異にする。