著作権法の改正とフェアユース
ニュージーランドで著作権法の改正、どころかリニューアルが準備されている。3回著作権を侵害した者のネットアクセスを遮断するスリーストライク法を、現在の保守政党が握るKey政権が猛烈な一般ユーザーとISPの反発で著作権法改正から削除した経緯がある。明らかに世界の知的財産権保護の動きに合うもので、権利者側の意向が反映される内容を用意する可能性が高い。
だが、スリーストライク法がオンラインコミュニティーの強力なデモなどで潰されたことは、今後の著作権法の書き替えの展望を明るくしてはいない。一般ユーザー、利用者側の意見を無視した法律の制定は困難だと見られている。
スリーストライク法はニュージーランドで世界初の法律が可決成立した。法律施行となる今年2月に路上でのデモやネット上のキャンペーンなどによって停止された。フランスで同様の法律が再提出されたが、もし可決するならば、何だってデモするフランス国民のことだから黙っていないだろう。
知的財産が主要産業でもあるアメリカのリーダーシップで(主にハリウッド)、世界的に著作権侵害への締め付けは強化されている。アメリカのDMCA法のような法律の制定を望んでいるのだろう。その中でもフェアユース規定は非常に曖昧なもので、アメリカの著作権侵害関連の訴訟で必ずと言っていいほど持ち出される。
しかしフェアユースはコンテンツの利用者にとってみれば必要な規定だと思う。コンテンツの流通にも大いに寄与する。アメリカのフェアユース規定の中にはパロディーがあり、権力批判の方法として最も効果的な風刺として広く認知されている。これはフェアユース規定があればこそで、日本でパロディーが社会風刺として確立しない遠因があるとも思う。導入には個別の裁判に委ねるような曖昧さを排除すべきか。
コンテンツの権利者が自ら指定するコンテンツの利用条件の制度化を目指した「クリエイティブ・コモンズ」の提唱者であるローレンス・レッシグ教授が、デジタル社会では「売り手側が、文化的コンテンツをいかに使うかを制限し、利用を厳しく管理している」と言ったが、正しくその通りだと思う。ネットという表現のためのツールはどんどん進化しているのに対し、表現の方法や範囲が法律によって縛られていることがコンテンツ不足をもたらしているのではないかとさえ思える。有害コンテンツや違法コンテンツは取り締まる必要があるし、ハリウッドなどが既存のビジネスを守ろうとすることはわかるが、表現の自由を奪ってしまえば民主主義の活性化の観点からも良くない。
政府の知的財産戦略本部が、日本版フェアユースの導入を提言した。だが提言したのみで今国会に提出されている著作権法改正案にしても基本問題小委員会の会合にしても、フェアユース規定について前向きに議論されている様子が伺えない。
利用者側の意向を踏まえた議論をもっと期待したい。

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