2009/05/13

テレビ業界の実験、Hulu

ハリウッドが世界中でP2Pをはじめとしたオンライン著作権侵害の弾圧に積極的に動いている背景には、コンテンツ業界の押えきれない感情が根底にある。恐怖。

すでにネットの進化は既存ビジネスを法で縛り付けておくだけでは守ってくれない。デジタル化されたコンテンツは自由にネット空間を高速移動し、どんなコピー防止技術を弄しようとも、一度無料利用の味をしめた一般ユーザーはそれをいとも簡単に破ってしまう。こうなれば既存ビジネスを守ることの出来る唯一の方法は、ネットを退化させることだけだ。そして民主主義社会である限り、それはインターネットでパワーを得た個人が許可しない。最後の手段は、個人からインターネットを取り上げることだ。よってアクセス遮断の制裁に行き着く。

特にハリウッドのビジネスは世界市場があってはじめて成り立つ。大きくなりすぎてそうなってしまった。巨額の制作費をかけて製作されるコンテンツは、世界という市場があるからこそ。その世界で、P2Pシステムの著作権被害は甚大だ。

ハリウッドもウェブの進化に対抗するばかりではない。無料でコンテンツを視聴できるサイト、Huluを昨年オープンさせるも、そのあまりの急成長ぶりに困惑している。今や視聴数でYouTubeに迫る勢いを見せている。

広告によって支えられているHuluは、これまでのハリウッドのビジネスに比較すれば収益では小さなものだ。このままどんどん成長してYouTubeを抜いてエンターテイメントの終着点になろうとも、これまでの市場の代替になるわけがない。よってアナリストも投資家も映画スタジオの役員も、Huluの成長を素直に喜んでいない。

ハリウッドスタジオの収益の2本柱は、DVDの販売とケーブルチャンネルへのコンテンツ供給だ。今日記事になっていたが、アメリカでは多くのファンがダウンロードよりもDVDを購入している。ケーブルテレビはアメリカでは普及率が高く、複数のチャンネルをパッケージで月額課金するのが一般的だ。ケーブルテレビ会社は人気のある目玉番組をハリウッドスタジオから買ってチャンネルパッケージを売り込む。人気番組は非常に高値で売れる。利用者にしてみれば、見たくもないチャンネルも当然たくさんパッケージに入っているから損をしている気分にもなる。

これまでケーブルテレビで見ていたドラマなどが無料でHuluで視聴できて、しかもあるソフトを使えばHuluで配信される番組をテレビで見ることも出来る。そうなればケーブルテレビなど必要性がなくなってくる。Huluの加熱ぶりに黙っていられないのが、ケーブルテレビ会社だ。

すでに新聞社が倒壊の危機にさらされており、Huluで墓穴を掘ってビジネスモデルを壊すなら、ハリウッドも倒壊する。よってHuluは人気ドラマを急に削除したり、連続ものを最後まで配信しないなどの措置をちらほら取っている。視聴者の一部は怒りのコメントを寄せている。

「それならP2Pでダウンロードだ!」

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム