2009/05/07

P2P著作権侵害、業界はISPを標的に

P2Pがネット上に登場して既に10年近くが経過する。その間、最も甚大な被害を受けたとされる音楽業界は、ネットワーク上に作品をアップロードしたユーザー個人に対して訴訟を起こしてきた。その最もたるものがアメリカの全米レコード協会だ。協会が侵害者を法的に追い始めてから既に3万件以上の訴訟を起こしたと見られている。標的になるのはP2Pのヘビーユーザーである大学生などだ。数十万円にもなる損害賠償額をその都度請求する。ある意味、日本のJASRACのようなもので、犯罪であることには違いがないが、情け容赦ない。

協会が起こしてきた裁判のほとんどの詳細を掲載しているサイトがあるのでリンクを貼っておく。http://info.riaalawsuits.us/documents.htm#Virgin_v_Marson

協会が本腰を入れてこれまで音楽作品の著作権を侵害すると判断されるユーザーを訴えてきたが、それによってP2Pでの音楽ファイルの交換が減少しては来なかった。個人をターゲットに訴訟をバンバン起こしてもそれがネットが抱えている著作権侵害の問題を解決することに繋がりはしないとの指摘があった。

昨年末、協会はようやくそのことを認識し、アメリカ議会に個人を対象に訴訟を起こす戦略から舵を切るとの証言をしている。協会は今後ISPとの協調体制を確立するとしている。最終的にISPにやらせたいのはスリーストライク制裁のようだ。著作権を侵害するコンテンツをアップロードしたユーザーのアクセスを遮断するというものだ。もっとも、こうした過激な制裁はヨーロッパでもニュージーランドでもユーザーの猛烈な反発で反故にされている。アメリカでも既に協会に対しての批判は多い。

だが、業界側の決意は固いようだ。EU議会によってその実現化がほぼ無効になったフランスのサルコジ大統領肝煎りのスリーストライク法に関して文化相は、EU議会の決定はフランスの法律に影響しないと発言しており、さらに“世界中で市民にネットアクセスを保証している国はない”と豪語している。

ドイツではISPが侵害ユーザーのIPアドレスを音楽レーベルに提供したことが発覚しているし、ニュージーランドではスリーストライク法の成立を完全には諦めていない。更に、台湾では著作権法を改正し、DMCA法に近いISPの損害賠償の責任制限を与えると同時にスリーストライク制裁を義務付けている。国際レコード連盟もISPに対して侵害を助長するサイトの閉鎖を求めていく方針だ。

P2Pでの著作権侵害を止められない理由のひとつとしてあげられているのが、Staggered Releaseと言われるコンテンツのマーケティングの方法だ。すべての市場で同時にコンテンツをリリースするのではなく、話題性を醸成する目的で市場ごとにリリースの日をずらすやり方だ。

ネットやラジオやテレビなどで新曲を聞き、欲しいと思ってiTuneなどで買おうとしても販売されいないというケースが多々あり、そうした場合にP2Pなどで入手する人も多いのではないかという指摘だ。P2Pの利用者もそのコンテンツのファンである場合が多いだろう。何が何でも無料で手に入れると思っているわけではないのではないかという。

ユーザーの団結した反対がない限り、ISPは制裁を強化せざるを得ない状況に追い込まれるのではないか。

0 件のコメント:

コメントを投稿

登録 コメントの投稿 [Atom]

<< ホーム