2009/05/13

最新ニュース 特集 文学界を襲うPiracy -NYT

概要

音楽業界や映像業界では、ここ十年、おなじみのことだったが、文学作家や出版社にとっては、「Kindle」(Amazonが提供する電子書籍リーダー)の時代は、まったく未経験の恐ろしい世界である。これまでは、「ハリーポッター」シリーズなどのベストセラー作品のデジタルコピーを、限られた人々が嗅ぎ付けていたぐらいだったのが、ここ数ヶ月で、「Scribs」(文書共有サイト。アップされた文書はFLASHに変換される。また、PDFやテキストでのダウンロードも可能にしている)や「Wattpad」(同様に文書共有サイト。このほどiPhone、iPod touchに対応)などのサイト、「RapidShare」(一般的なファイル共有サービスサイト。スイスで運営されている)や「MediaFire」(同様にファイル共有サービスサイト。こちらはアカウント不要で共有ができる)といったファイル共有サービスにおいて、海賊版が爆発的に増殖しているという。

Hachette社は、同社法務部が、違法サイトの追跡のために相当な時間をとられていることを嘆き、また、John Wiley & Sons社では、このために専従のスタッフを擁し、先月には、5000通もの警告文を送付したという。これは昨年の5倍の数字に跳ね上がっているとのこと。

SF作家アーシュラ・K・ル=グウィン(Ursula Kroeber Le Guin;「ゲド戦記」の作者)は、ウェブサイト「Scribd」を追っていた。彼女の作品に極めて類似したいくつかの本のデジタルコピーに遭遇したためである。ロングセラーの作品「闇の左手」の一つのコピーが含まれていた。ル・グインも出版社も、電子出版の許諾を行ってはいない。文学界に静かに増殖しているデジタル海賊版。「なぜ、彼らは、私の著作権を侵害し、それでうまくやりおおせると考えられるのかしら。」と、ル・グインは言う。


作家であり、アメリカSFファンタジー作家協会の会長でもあるラッセル・デイヴィス氏は言う。「もぐら叩きですよ。一匹たたくと5匹飛び上がってくるんです。」

「Scribd」や「Wattpad」などは、大学の論文や自主作品をアップロードするようにユーザーへ呼びかけている。しかし、有名な作品がこれらのサイトに現れたことで、ここ数週間、業界から槍玉に挙げられている。

両サイトとも、一度警告を受けたような違法な本については、すぐに削除すると言う。著作権保護された作品がアップロードされたら特定できるようにフィルターを設定しているという。

いくつかの出版社は、この問題がクローズアップされるとますますコピーが増える恐れがあるとして、コメントを控える傾向を見せてきている。

かつて、Napsterのように、音楽業界において、産業全体に苦渋を味わわせる脅威となったファイル共有サービスではあるが、さしあたり、書籍における電子海賊が、同様に拡大するかどうか。

音楽業界の先例では、業界のオンラインストアの整備もままならない中、ユーザーやNapsterに対し、徹底的に法的手段に訴えたことで、ファンの反感を買った。もしiTunesが、3年早く始まっていたら、Napsterや後続の海賊行為の環境がどれだけ大きくなったかというと分からないと思う。なぜなら、人々は、決まって、悪質だと見なされない価格で、合法的に購入するのを常としているからである。」とBertelsmann(ベルテルスマン社:ドイツの複合メディア企業。世界で最も大きな出版社「ランダムハウス」のオーナー企業)の会長は語る。

AmazonのKindleや、SonyのReaderなどが普及するようになれば、デジタル版で読むことが容易になってくる。無許諾にアップロードされているデジタル版の多くはPDF形式であり、それらをKindleやReaderに簡単にメールで送ることができる。

作家達の反応:

スティーブン・キング氏は、eメールで次のように語っている。「問題は、こういった輩を追いかけることに、どれだけの時間とエネルギーを費やしたいのだろうかということ。そして一体いつまで。こういう人たちの多くは、Funioin(リング状のスナック菓子)や安いビールで生きながら、カーペットの端切れを敷き詰めたところで生活しているんだろうね。」


「金儲けではなく、支払ってくれと言っているだけだ。」とは、ハーラン・エリスン氏(Harlan Ellison:短編集「世界の中心で愛を叫んだけもの」の著者)の言。エリスン氏は、9年前に、彼の4つの物語を違法にアップしたユーザーに対して止めさせるようにISPを訴えた。

他方で、デジタル海賊版を、新たな読者が作家を探し出す方法と見る作家もいる。昨年、ニューヨークタイムズ紙の子供部門でベストセラーリストに7週間ランクインした青年向け小説「Little Brother」の作家コリイ・ドクトロウ氏は、ハードカバーで出版した日に、無料の電子版を提供している。彼は、無許諾のものも含め、無料版が、新たな読者を誘い出すものと信じている。 -5/11 The New York Times
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