2009/05/17

新聞業界、破綻の足音

アメリカ議会で新聞社の未来に関する公聴会が開かれ、インターネットに移行する現在の過程で苦労している現状を法律によって打破する提案が、メディア業界側の弁護士によってなされている。ワシントンポストに提案を寄稿したブルース・サンフォード弁護士は、ジョン・ケリー上院議員が委員長となった公聴会では、ひとつの重要な事実を認識していないとし、その認識のもとに議論を展開する。

今現在ネットを席巻するグーグルを筆頭にしたネット企業も、設立当初は収益化に随分苦労しており、政府によって与えられた法律を傘にして急成長を遂げることができた、という認識だ。

グーグルCEOのエリック・シュミットは、消滅が心配されているジャーナリズムをウェブ2.0でしかと確立させるために必要なことは、新しい商品・サービスを発明することだ、少なくともグーグルならそうする、と発言した。

サンフォード弁護士は、グーグルも検索エンジンがウェブサイトをインデックスする際にウェブサイトオーナーの許可を得る必要性を免除されたからこそ今のグーグルがあると主張する。

弁護士が提案するジャーナリズムの未来を手助けする法律は以下の通り。
・検索エンジンのサイトインデックスを著作権法違反にする。
・“ホットニュースドクトリン”の法律化。
・メディア所有制限の撤廃。
・税金の優遇制度の導入。
・独禁法の適用免除。

ベン・カーディン上院議員が新聞社の非営利化を提案している。非営利化しなければこれらの提案は行き過ぎだ。ジャーナリズムが死滅する危機感は共有されてしかるべきものだろうが、ジャーナリズムは新聞社の特権ではない。ジャーナリストになるために資格はいらない。全米の大学でジャーナリズム学部があり、倫理や記事執筆のテクニック、取材の方法など教えているが、不祥事は絶えない。ついこの間まで、新聞配達の少年が教育もロクに受けずにそのまま記者になっていた。ブロガーにジャーナリズムができない理由などどこにもない。

弁護士の提案には、当然のごとく猛烈な反対意見が出ている。その反論の主な要点をまとめる。

ウェブはリンク経済であるということ。検索エンジンというリンクの大元がなければウェブ経済自体が破綻する。さらに、知識は共有されなければならない。新しい知識はウェブアップした数秒後には共有される。誰のものでもなくなる。

新聞社のビジネスモデルの基礎は、編集力と供給力だ。ネット以前は新聞社がニュースを独占し、どのニュースを新聞に掲載するか決定する。マーケットに供給する数量も調整可能で、それによって広告価格をつり上げた。ネットはこのビジネスモデルの正反対を行く。誰でもいつでもどこにいても好きなだけあらゆるニュースを読み、掘り下げることができる。そうなればマーケットも無限に拡大し、広告価格は限りなくゼロに近づく。

オンラインニュースの収益化は、そうした状況では誰であっても難しい。課金制度、訴訟、または法律でも収益化を可能にはしない。

コンテンツが「無料」になることはニュースばかりでなくコンテンツ業界では共通の問題だ。ましてニュースはエンターテイメントではない。ニュース自体に課金することの愚かしさに気付くべきだろう。

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