2009/07/10

これは参った!完全防音のイヤホンが必要だ!

著作権をはじめとする知的財産権は、極めて傷つき易い権利価値であり、それゆえ社会的に注意深く守っていかなければならない。

ところが、そうして守られている権利者によって、ときに、その既得権益を至極当然のものとして、社会への要求が無分別に行われることが往々にして見られるものである。

米国の権利者団体が主張していることはまさに、この無遠慮なケースに当てはまる。

 彼らに言わせれば、携帯の利用者が「着メロ」を鳴らす行為は、その度に権利者の著作権を侵害することになるとのこと。それゆえ、モバイル事業者に対して、携帯利用者による「着メロによる演奏権侵害」をおりこんだものとしての追加的なロイヤルティの支払いを要求している。

 このあきれた物言いは、要するに、携帯の着メロ音が不特定多数の人々に聴かれているため、着メロは一般公衆への演奏行為にあたるという、コメディアンでさえ思いもつかなかった見事な屁理屈である。

 さあ、皆、これからは、完全防音の密室が必要だ。我々のプライベートルームから一音でも漏れて、他人の耳をかすめようものなら、著作権侵害で訴えられる。はたまた、東京の混雑する電車内、イヤホンで音楽を聴く場合にも、半径50cm圏内で押し合いへし合いする我々にとって、完全防音イヤホンは必須になるだろう。…まあ、これはこれで電車内でのイライラが減るから良いのだが。

2009/07/08

youtubeの勝訴にみる著作権登録

 youtubeあるいはグーグルが最も期待を寄せるのはバイアコムとの1000億円規模の訴訟での勝訴であろう。が、とりあえず、youtubeは、小さな戦いで勝利を収めることに成功した。英サッカーリーグ「Premiere Football League」の動画について著作権侵害として訴えられていた裁判で、裁判所が下した判断は、米国における著作権登録のない外国作品であるため、同リーグが求める法定損害賠償請求および懲罰的損害賠償請求を棄却するものだった。

 これは、著作権侵害そのものが認められなかったのではなく、米国著作権法制度における「法定損害賠償」制度上の賠償請求が認められなかったということである。同制度は、著作権の侵害による現実的な損害額の算定が困難な場合を想定して、一律金額による損害額算定を認めるものである。ただし、この制度は著作権の登録を条件あるいは基準としている。つまり、未発行著作物については、登録の効力が発効する前に侵害された場合は本制度の適用外になる(米国著作権法412条(1)号)。あるいは、発行された著作物であっても、第一発行日より前の侵害であり、かつ、登録の発効日前の侵害の場合も法定損害賠償の請求は認められない(ただし、この場合は、第一発行日から3ヶ月以内に登録がなされていれば救済される。同412条(2)号)。

 上記のような特別な場合を除き、基本的には、著作権登録を済ませていれば、著作権侵害訴訟において、法定損害賠償(および弁護士報酬の回復)を請求できる旨定められている(米国著作権法412条、504条、505条)。

 今回のプレミアリーグ動画の侵害裁判は、この文脈での判決であることに注意したい。
 
 日本においても、法定損害賠償制度の導入は検討されている